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story33*泣き上戸? ページ38

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「ちょっと、Aっ!?」


「はい?」



いきなり倒れた私に驚いたのか、太宰さんの焦った声が聞こえてくる。


その声に、私はいつも通りの口調で返した。



「A……もしかして、お酒飲めないの?」


「いーえ、そんなことありません!」



何を言ってるんだろうか、太宰さんは。


確かに私はお酒飲むの初めてだけど、今こうやって一口飲んでも何ともなかったし、美味しいって感じたし。


そのような旨を伝えると、太宰さんは目を丸くした。




「お酒飲んだことないの!?」


「そーですけど」



だって遅生まれだから二十歳になったばっかりだし。武装探偵社に入ってからは太宰さんの寮に来たからお酒飲んでないし。


と弁解しつつ、そんなことはどうでもいいんだ。


私はお酒という未知の味に、感動を覚えていた。




「太宰さん、お酒っておいしーですね!」


「う、うん……でももう止めた方が良いと思うよ?」


「……なんで?」



困った顔をしている太宰さんにそう問うと、そのお酒は度数が高いとか、見せたら何も言わなかったから飲めるのかと思った、とか何やら言い訳じみたことを話し始めた。


だから、その口を塞いでやった。……勿論、てのひらで。




「ん……っ」


「もーいいです! お話長いですよ、太宰さん」




そう言って、グラスの中のお酒をまた一口飲んだ。


頭がギンギン痛むけど、なんか、それすらも気持ちいい気がしてきた。




「太宰さんは飲まないんですか?」


「…………」




微妙な表情を浮かべ、私の顔を見つめる太宰さん。


私がお酒を飲むことに、何の問題があるのだろうか。聞いてみると、意外な答えが返ってきた。




「だって明日の仕事に響くでしょ」


「え?」


「君、そういうの気にしそうだし」




たしかに、明日の仕事中に俗に言う“二日酔い”というやつになるのは嫌だ。けど、そもそも私を誘ったのは太宰さんじゃないか。


理不尽な太宰さんにむすっとした表情を向けると、太宰さんは眉を寄せた。




「……こっち見ないで」


「えっ!? なんで!?」




それでぱっと視線を逸らしてしまうものだから、私は大ショック。


酷いです、太宰さん!! とふざけて言いたいのに、言葉にならなかった。



私の目から、ぽろぽろと涙が零れていく。




「ちょ、A……」


「ひ、ひどい……だざいさんっ」




私はボロボロ泣きながら、太宰さんに抱きついた。



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鈴蘭(プロフ) - ウナさん» 私も書いててひえええってなってます笑(?) (2019年4月30日 12時) (レス) id: 2e99d5c18a (このIDを非表示/違反報告)
鈴蘭(プロフ) - みそしる大臣さん» そんなドキドキをお届けできているなんて嬉しい限りです(^^) (2019年4月30日 12時) (レス) id: 2e99d5c18a (このIDを非表示/違反報告)
鈴蘭(プロフ) - SAKA0829093さん» ありがとうございます!ダラダラ更新で本当すみません… (2019年4月30日 12時) (レス) id: 2e99d5c18a (このIDを非表示/違反報告)
ウナ - もうヤバイですマジでもうヤバイですよ!!!!ひええええってなります(?) (2019年4月3日 19時) (レス) id: 0bc8f10023 (このIDを非表示/違反報告)
みそしる大臣 - 夢主より僕の方が早くキュン死にしそうだ…心臓が持たない! (2019年3月30日 23時) (レス) id: 487407bef1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鈴蘭 | 作成日時:2018年5月25日 1時

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