story32*饗宴と反撃と乾杯と ページ37
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社員寮に着き、私は太宰さんに買ってもらった服を惜しみながら脱いだ。
本当はずっと着ていたいけど、そのまま正座したらスカートが皺になってしまいそうだったので、仕方がない。
「太宰さ〜ん、お待たせしました」
「ん、大丈夫だよ」
当然のことだけど、私が着替えている間は太宰さんは外に出て待っててくれている。勿論太宰さんが着替える時も、私が出ている。
お互いにラフな格好(太宰さんは外套を脱いだだけだったけど)になった私たちは、ついに初めての宅飲みを始める。
「ねえ、何に乾杯する?」
「え?」
開口一番にそう言った太宰さんに、私は首を傾げる。乾杯って、何かにするものなの? という単純な疑問が湧いてきたからだ。
すると、太宰さんは「ごめんごめん」なんて言いながら、説明してくれる。
「例えば、私とAの初デートに、とか」
「っ」
ぶわっと顔が赤くなったのが分かった。にやりと笑った太宰さんの考えも、流石にもう分かる。
……確信犯だ。
だから私も負けてられない。
太宰さんのことが好きだと自覚した以上、キュンとさせられてばかりじゃいられない。
私は恥ずかしさに頬を上気させたまま、にんまりと笑って見せた。
「私と太宰さんの初デート成功に、乾杯」
「っ!?」
グラスを手にしたまま硬直する太宰さんにちらりと視線を配ってから、勝手にグラスを合わせる。
チリン、と小さな音が響き、私なんか大人っぽい! と一人で感動してみたり。
「太宰さん、飲まないんですか?」
「の、のむよ……」
珍しく、分かりやすく頬を染めている太宰さんにちょっとだけ嬉しくなったり。
気分が高揚していることを自覚したまま、私はグラスの中でゆらゆらと揺れる蒸留酒を口に含んだ。
____直後。
「ちょ、A!?」
バサリと倒れた私の体。
あれ……と違和感を感じた頃には、もう私の意識はほとんど残っていなかった。
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鈴蘭(プロフ) - ウナさん» 私も書いててひえええってなってます笑(?) (2019年4月30日 12時) (レス) id: 2e99d5c18a (このIDを非表示/違反報告)
鈴蘭(プロフ) - みそしる大臣さん» そんなドキドキをお届けできているなんて嬉しい限りです(^^) (2019年4月30日 12時) (レス) id: 2e99d5c18a (このIDを非表示/違反報告)
鈴蘭(プロフ) - SAKA0829093さん» ありがとうございます!ダラダラ更新で本当すみません… (2019年4月30日 12時) (レス) id: 2e99d5c18a (このIDを非表示/違反報告)
ウナ - もうヤバイですマジでもうヤバイですよ!!!!ひええええってなります(?) (2019年4月3日 19時) (レス) id: 0bc8f10023 (このIDを非表示/違反報告)
みそしる大臣 - 夢主より僕の方が早くキュン死にしそうだ…心臓が持たない! (2019年3月30日 23時) (レス) id: 487407bef1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鈴蘭 | 作成日時:2018年5月25日 1時