馬鹿みたいに、好き。

＊ ページ6

.





Side of You





あの子もあの子もあの子も


………瑞稀くんに渡そうとしてるらしい。


でも、そのうち何人かは


ちょっとしゅんとした顔で持ってたチョコを


自分のカバンにしまってる。


まさか、受け取ってないのかな、瑞稀くん。


…………まさか、ね。





「…なんで私も持ってんのよ、バカ」




放課後、カバンの中にある小さな箱を見て


はぁっとため息をつく。


たまたま、お店を見てたら


瑞稀くんが好きそうなのがあったから


つい、買っちゃって。


我に返って恥ずかしくなったのを思い出す。





『…………っ、やっと見つけた』





向こう側から走ってきて


息を切らしながら駆け寄ってきてくれたのは


さっきからの悩みの種の本人で。


戸惑う私に肩を弾ませたまま


近づいてはカバンから何か探ってる。




『あのさ、ほんと…っ要らないならいいんだけど』


「う、ん？」




取り出されたのは…………




「え、…っ」


『え？』


「な、なんでも…ない」




言えない。


同じチョコ買ってるなんてぜっったい言えない。


不思議そうな顔をしながらも


瑞稀くんは私にそれを差し出して


受け取ってくれませんか、なんて


たどたどしい敬語。




『俺、ほんとにAちゃんのこと好き』




いつにも増して真剣な雰囲気が伝わる。


うるさい心臓は


きっと自分よりも私の気持ちを知ってる。







.

＊→←＊

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す