昇る空へ・2 ページ19
*
時間は過ぎて、三年後。4月頭、まだ寒さと雪が若干残る公園のベンチに二人で座りながら、私は聞いた話の感想を言った。
「で、今、部活から離れている……と」
「……そんな感じかな」
「バッカじゃないの?」
「ばっ……!?」
あわあわと口を開けたり閉じたりする東峰の横で、私は黙って缶コーヒーをすする。間違って無糖を買ってしまったせいで結構ツライ。
急に「ちょっと話を聞いて欲しい……」なんて電話があって、久しぶりに会ってみたらこれだ。元同級生はちっとも成長してやいない。
「私をわざわざこんな寒い公園に呼び出しておいて言うことはそれだけですか」
「え!? 待ち合わせ場所指定したのAじゃなかった!?」
「そういえば」
「…………」
はー、とため息をつく東峰の腕を掴んで「……捻り上げてやろうか?」と睨めば無言でこくこく頷く。それがイエスを示した反応だということを、こいつは知らない。
辛かったのはわかる。折れてしまったのもわかる。けどさ。
「まだ誰も東峰のことを見捨ててないでしょうよ」
「……そうかなぁ」
「その後輩の謹慎ももうすぐ解けるんでしょ? それで新しい一年生も来るって時にこのへなちょこは」
「へなちょこ言うなよ……」
「間違ってないでしょ」
時間を置いてもやっぱり苦いコーヒーを、無理矢理すすって身体を暖める。どれだけ、ワガママを言ったら済むんだろう。
「今年でラストチャンスだよ」
「…………」
「烏、もっかい飛ぶんでしょ?」
「…………そう、だな」
東峰は頷いて、勢いよく立ち上がる。普段は弱気でエースなんて呼んでいいのかと疑いたくなるくらいなのに、こういう、ちょっとした時の表情や行動は、ついそう思いたくなる力強さがあって。
やっぱり私弱いなあ、なんて思っている私を振り返って、東峰はちょっと笑って言った。
「A、何がいい?」
「……は?」
「それ、無糖飲んでるんだろ。聞いてくれたお礼、何か奢るよ」
思わずぽかんとする私の前で、相変わらず彼は笑っている。……何だ、分かってたの。
「……駅前のスタバで」
私はそう言って重い腰を上げる。
これだから、どうやったって私はこいつの友達をやめられないのだろう。
どうしようもない悔しさを紛らわせるために、東峰の左腕を捻ると「あいたたたた」彼の悲鳴が、静かな公園に響き渡った。
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捏造しまくり。
旭さんにはいつどんな時も強気な女の子を当てたいです。
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スマトラ島のラフレシア(プロフ) - ★マチャキ★さん» 好きだったらだいたい書いてますよー。 (2016年7月20日 19時) (レス) id: db820b405d (このIDを非表示/違反報告)
★マチャキ★ - 照ちゃんあった!! (2016年7月19日 20時) (レス) id: a549331ee4 (このIDを非表示/違反報告)
スマトラ島のラフレシア(プロフ) - 彗華@京都へ行きたい (元:凰華)さん» そしてお察しの通り、及川さん大好きです。色々書きたくなるので、最初と最後に入れてるだけなんですけどね。前作も前々作も読んでくださってありがとうございます!更新頑張ります!! (2016年4月18日 18時) (レス) id: db820b405d (このIDを非表示/違反報告)
スマトラ島のラフレシア(プロフ) - 彗華@京都へ行きたい (元:凰華)さん» コメントありがとうございます!とんでもない、長文コメント最高に嬉しいです…!!私も実は「この続き書きたいなぁ」なんて毎回思ってまして、うーん……したい、ですねぇ……(笑) (2016年4月18日 18時) (レス) id: db820b405d (このIDを非表示/違反報告)
彗華@京都へ行きたい (元:凰華)(プロフ) - 前作、前々作を見て思ったのですが【及川さんで始まり及川さんで終わる】というループみたいなものが出来ているように感じました。作者様は及川さんが好きなのでしょうか?更新頑張ってください。応援しています!(長くなってしまいすみません) (2016年4月17日 22時) (レス) id: 4e64820097 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:スマトラ島のラフレシア | 作成日時:2016年4月14日 18時