【派生作品】Er und Ich. / 彼と僕。

　　(6/25記) ページ24

まるで二人にスポットライトでも当てるかのような月明かり。
今何時だとか、寝ないと明日の仕事に間に合わないだとか、何故自分の胸がこんなにもうるさいのだろうとか、そんなことを考える暇さえないくらいに、澪はミヒャエルに夢中になっていた。

一、二分たっただろうか。
澪はようやく普段通りを取り戻し、ミヒャエルへの言葉を絞りだそうとしたが何を言っていいかわからなかった。

「ミヒャ。」
「ン？なニ？」

会話かどうかもわからないほどの短い会話を交わす二人。
月は雲に包まれ、先程のようには明かりを当てることはない。

ー澪sibsー

『寝れない』
その一言に尽きた。
僕は幼少期から芸能界にいたから恋人はもちろん友達さえも作ったことがなかった。だから今でも『友達としての距離感』と『恋人としての距離感』がわからずにいた。
僕としては、ミヒャと過ごした今までの全てを『友達』と信じて疑わなかった。ただ、今回は違う。僕でもわかる。
これは『恋人としての距離感』だ。
誰かにそうだと言われたわけでもないが、確信に近いナニかがあった。

ー澪sibs 終了ー

「ねぇミヒャ、僕やっぱりさっきのこと、怒ってる。だからさ…僕のお願いきいて？」
「…うン。わかっタ。」

先程の行動に反省の意を示すためにも、ミヒャエルに断るという選択はなかった。
一方の澪はというと、獲物を捕らえたかのような目を一瞬チラつかせ、また『いつも通り』へと戻す。
そしてミヒャエルの服の裾を軽く引っ張り、軽く上目遣いをして言った。

「一緒に寝よ…？」

あえて間を空けながら発する六文字。
ミヒャエルはそれに気づくことよりも、今の澪は『単なる好奇心』で動いているのか。それとも『ホンキ』なのか…。
どちらにせよ、ミヒャエルは今そんなことを考える気などないだろう。

そんなミヒャエルに追撃。

「ミヒャのベッド広かったし、二人で寝ても狭くないとは思うんだよね。あと、ソファーで寝ると、腰痛めるよ？僕がゲームやって寝落ちした時ヤバかったもん。それに…」

色々な理由を話した上で、一番効果的であろう一番短い言葉を紡ぎ出す。
『ズルい』そんなことわかってる。
だけど、だけど、そうまでしても確かめたいものがあった。

「少しでも…ミヒャと一緒にいたいから。」

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