五条さん家のお兄ちゃん！ 続編【呪術廻戦】

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それから高専に入学するまで、俺と兄貴は必死に暗殺の腕をみがいた。対人を意識した、術式の使い方と身体の使い方、相手が心を許しやすい話し方、表情、声色。別の人格を被ったまま家で過ごすこともした。別の人格のおかげで、一緒に遊ぶトモダチもできた。すぐる君と会うのはやめた。彼とはまだ友達でいたかったから。


俺の術式は、殺しには向いているようだった。いや、実際これ以上ないほどにピッタリだった。一定時間触れるだけで、相手に自傷させる。兄貴は、『自分で自分を傷つける恐怖にさらされながら自分をとるか親友をとるかの選択を迫られる。なんて最高なんだ！』と、それをひどく喜んだ。『お前は才能があるよ』とも。嬉しくはなかった。こんなの、才能なんかじゃない。ただの殺戮マシーンでしか、ない。


やがて、俺が高専に入学する年になった。いよいよだと、胸が強く引き締まった。その頃には、なんとか対象を暗殺する決心をつけていた。否、俺は対象より先に自分の本音を押し殺すことに成功していた。


家を出る前日、何となくあの公園に向かった。もう金魚は死んでしまって、あの小川の近くにすぐる君と埋めた。唐突に会いたくなった。誰に、と独り嘲笑った。


夕方の公園には誰も居なかった。いつの間にかジャングルジムは撤去されていた。小川に沿って少し歩いた。ほんの少し。金魚を埋めた場所を掘り返してみたりもした。何も残っていなかった。


立ち上がったら夕日が顔を刺した。目に痛くて思わす顔を顰めた。さっき掘り返した穴を足で雑に埋めた。あっという間に平になって、何もなくなった。
ここも、自分も。あったはずの物は、何も無くなった。


帰ろうとした時、後ろでザリ、と音がした。振り返ると、幾分か髪の伸びたすぐる君がいた。ランドセルを背負っていた。


｢え、あ…久しぶり…｣

｢…久しぶり、すぐる君｣

｢…ねえ、ずっとどこ行ってたの？どうして公園に来なかったの？どうして───｣

｢───すぐる君。僕、明日から高校の寮に入るんだ。多分、もう会えなくなると思う｣

｢え…？｣

｢今までありがとう。楽しかったよ。君と友達になれてよかった｣

｢まって、｣

｢これからは、学校の友達と仲良くしなよ。君と歳が近くて、心から笑える子と。いるだろ？学校で仲良い友達｣

｢…いないよ。そんなの、居ないよ！｣

すぐる君はそう叫ぶと、俺に抱きついた。その時初めて、すぐる君のランドセルが土で汚れているのに気がついた。

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