パパはカッコいいと思われたい【安室透/降谷零】

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「あ！ランドセル！！」

降「っ、A！」



すぐ脇には、組織やら公安やら仕事の資料を大量に開いているパソコン画面
その中で一つだけやけに浮いたウィンドウ

"入学式にピッタリ！簡単かわいいヘアアレンジ！"

と題された動画を見ながら、やった事も無い手順に苦戦していると手元からスルスルと抜けて真っ直ぐに戻っていった細い暗髪

もうあまり時間も無いというのに...



「パパ見て！どう！？」



俺の労力を台無にした元凶らしいランドセルを、きっとこれから大きく成長するであろう小さな背中に背負って見せ付けてくる幼い女の子

現戸籍上の名は"安室A"

3年近く前
彼女の両親は黒づくめの組織の暴挙に運悪く巻き込まれ死亡
...本当にただの通り掛かりの一般人だった

もちろんAもジンの手によって処分されるはずだったが、ベルモットが"やり過ぎだ"と諭し何とか逃した結果我々公安が保護

こういった事件は内密に処理するしか無く、刑事部に引き渡すのには困難があると判断され親族を探す事にしたが...

母方の祖父母は既に他界
父方の祖父母は"息子の嫁を認めない"と絶縁関係
それぞれの兄妹にも探りを入れたが、さまざまな理由で誰も3歳の子供を突然養育出来るような状況には無かった

そうやって、とりあえずここで預かりながら頭を悩ませていたある日

突然、何の疑いも無く"パパ"と言い始めた

最初は"俺はパパじゃない"と何度も訂正していたがそれでも呼び続け、精神科にも見せに行ったが問題は無いとされた
風見らにも、現状俺が預かるのが最善策なのではないかと…

その結果が




「いつ買ってくれたの！？」

降「...実は去年のクリスマスにサンタさんが置いて行ったんだ」

「サンタさん！？本当！？」



...正しくは公安部のおじさん達だが

Aには公安の話はしていない
したところで理解も難しいだろう上に、知らない方がいい
だから、戸籍名を"降谷"でなく"安室"に変更した

子供なら成長する過程で幼少期の事は忘れる
人間の脳はそう出来ているから仕方ない
...だがそれが可哀想だとも思いつつ、親が殺されたことなど覚えていない方が幸せなのかもしれないとも考える


そんな今日は帝丹小学校入学式
つい最近、卒園式に保護者として着て行ったばかりのスーツに身に包む俺とは違って
嬉しそうに大きいランドセルを抱えるAはまた新品のフォーマルウェア

おじさん達はどうも甘やかしたがるらしい

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