玖ノ壱 命が散るということ ページ38
【後悔はなかった】
「竃門少年、猪頭少年、黄色い少年。もっともっと成長しろ。そして君たちが鬼殺隊を支える、柱となるのだ。俺は信じる。
君たちを、信じる」
「…」
抑えきれない涙を、手のひらで覆う炭治郎。その少し離れた場所で、着物を着た女性が立っていた。凛としたその姿は憧れた、母。
母上
俺はちゃんとやれただろうか
やるべきこと、果たすべきことを全うできましたか?
その母は幻覚だ。とうの昔に亡くなった、若き頃の母のまま。強く美しい女性として、杏寿郎を見つめていた。そして____。
“立派にできましたよ”
笑ってくださった。思わず、微笑んだ。嗚呼、自身の責務を全うできたならば。後悔などない。後悔をすることなど、できない。
そこから記憶はない。ただ、魂の花弁が散る感覚と同時に、目の前が真っ暗になって。終わりのない穴の中に、落下していった。
「汽車が脱線する時…、煉獄さんがいっぱい技を出しててさ。車両の被害を最小限にとどめてくれたんだよな」
「そうだろうな」
「死んじゃうなんて、そんな…。ほんとに上弦の鬼、来たのか?」
「うん」
「なんで来んだよ、上弦なんか…。そんな強いの?そんなさぁ…」
「うん…」
「Aさんまで、戦ったの…?それで、死んじゃったわけ…?ねぇ…」
「…うん」
炭治郎は、二人の最期を鮮明に思い出した。何よりも強い強靭な刃だった。何よりも硬い折れない刀だったのだ。なのに…。
「悔しいなぁ、何か一つできるようになっても、またすぐ目の前には分厚い壁があるんだ。
凄い人は、もっとずっと先の所で戦っているのに。俺はまだ、そこに行けない。こんな所でつまずいている俺は、俺は…
煉獄さんやAさんみたいに、なれるのかなぁ…」
「うっうっ、ううっ……」
その時だった。傍らで震えて、必死に涙を堪えていた伊之助が声を荒げた。ただただ、その場で泣いている二人を大声で叱責する。
「弱気なこと言ってんじゃねぇ!!
なれるかなれねぇかなんて、くだらねぇこと言うんじゃねぇ!!信じると言われたなら、それに応えること以外考えんじゃねぇ!!
死んだ生き物は土に還るだけなんだよ、べそべそしたって戻ってきゃしねぇんだよ
悔しくても泣くんじゃねぇ
どんなに惨めでも、恥ずかしくても、生きていかなきゃならねえんだぞ」
無限列車討伐では、手痛い傷跡と大切な人を失った想いが更に深く、深く。剣士たちの胸を締め付け、奮い立たせることとなった。
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ユリ(プロフ) - 出来ればでいいんですが、後日談的なものがみたいです (2020年8月26日 18時) (レス) id: ba2a71100d (このIDを非表示/違反報告)
セニオリス - ユリさん» 最後まで読んで下さり、本当にありがとう御座いました。またこの作品に顔を出してもらえると嬉しいです。 (2020年4月7日 21時) (レス) id: 353512f049 (このIDを非表示/違反報告)
ユリ(プロフ) - 完結おめでとうございます。最後まで感動しっぱなしでした (2020年3月2日 11時) (レス) id: ba2a71100d (このIDを非表示/違反報告)
セニオリス - アリスさん» 毎度毎度、遅くて申し訳ないです!!最近、スランプ中でして……。どうにか必死に更新をしたいと思います……!! (2020年2月23日 10時) (レス) id: 9ec8afc8ac (このIDを非表示/違反報告)
アリス - 続きがものすごく気になってそわそわして寝られません。更新頑張ってください (2020年2月21日 22時) (レス) id: ba2a71100d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:セニオリス | 作成日時:2019年7月8日 14時