徒花の散る頃《四》 ページ43
「……では本当に。ミミックの奇襲による敗北ではなく。首領暗殺の、失敗だったと?」
中也は何も答えない。表情に怒りも浮かんでいなかった。ただ静かに、芥川を見つめ返していた。
その表情が、足立のこれまでの所業を裏付ける証拠であり。今、芥川が抱える葛藤を理解している証拠でもあった。
「―――それならもう一つ、聞かねばならぬことがある」
「ああ。言ってみろ」
「千代助の腹には、正面に三つの穴が空いていた」
「……。」
「あれは簡単に撃たれはしない。銃を持っている敵がいる状況で、無防備にしていられるなどあり得るのか」
「あり得ねぇな」
しかし、たった一つだけ、そんな状況を可能にする方法は存在する。中也は一呼吸を置き、諦めたように呟いた。
「足立を撃った奴が油断するような顔見知りであったなら、話は別だって。手前はそう言いてぇのか。芥川」
「……白状せよ。中也さん。貴方が、千代助を撃ったのだと」
中也は懐から、【足立の黒髪】を取り出す。その瞬間、芥川の激情は頂点に達した。
芥川は、中也の腰に垂れ下がったホルスターから、槍に変えた外套によって拳銃を取り上げた。
中也のすばやい蹴りは外套を沈ませ、衝撃で拳銃が天井まで飛んでいく。
黒い波濤となった外套は、地面を蹴り上げ、跳ね上がった重力使いを追従した。
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アバンギャルド・マボ(プロフ) - PVの方も見てくださってありがとうございます!!!いつか未来分岐のあるノベルゲーム版を書いていきたいと思っておりますので、その時は是非プレイしてやってください!! 遂行する前から読んでくださってありがとうございます…コメントめちゃくちゃ嬉しかったです… (2019年8月29日 13時) (レス) id: f747016130 (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - 読み込んでくださってありがとうございます(;_;) 台詞に言及してくださるのが嬉しすぎて…。 細かいことは気にしないを地で行く姿が伝わっていることが大変嬉しい!!ずるいぞお前って言いたくなるタイミングで男前を発揮する芥川が表現できててよかった!!! (2019年8月29日 13時) (レス) id: f747016130 (このIDを非表示/違反報告)
よしな。(プロフ) - あと、PV観ました。何あれすっごいですね!!音楽のセンスと文章ぴったりです!老爺ってまさか……子どもたちってまさか……と思いながら観てました笑。推敲する前から足立シリーズ好きなんですが、もっと好きになりました。 (2019年8月28日 12時) (レス) id: 97ebc294fb (このIDを非表示/違反報告)
よしな。(プロフ) - 不断の糸の芥川が好きすぎる。「どんな人生を歩んできたかなんて過去でしかない」って言えるのは君だけだよ……「文章だけで何を理解できる」か。これから大切なのは今であり未来だと言われてるみたいで。だからこのコンビは好きなんだ。 (2019年8月28日 12時) (レス) id: 97ebc294fb (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - わあああいつも有難う御座います!!この作品は初めて自分がシリアスに着手したやつなので、一番好きだといっていただける方がいるのが最高にうれしいです・・・これからもお付き合いください!!! (2019年7月28日 22時) (レス) id: 940de82038 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アバンギャルド・マボ | 作成日時:2016年10月22日 0時