蜘蛛の糸、十二本目 ページ12
◆
「…まぁ、あの骨のように、私には貴方の願いを叶えてあげられるほどの力はないのですが」
「何?」
しみじみとお話の世界に入り込んでいた龍之介は、突然耳に入ってきた単語に驚きました。
…そうなんです。ここまでの話は前座。ここで終わるだろう、と予想するところで、このお話は急展開を見せるんです。
「葉限が語った希望や夢のお話が、実現してゆくのです。驚いたことに、あの魚の骨に願ったことはなんでも叶ってしまうんです」
「…小さな願望器のような呪具に変わってしまった、とでもいうのか」
「えぇ。そうして願望器を手にした葉限は、美しい服や靴を願いにかけ、継母の目を盗んでお祭りに向かいました。本当なら庭番を任されていた身ですから、彼女から身を隠すように祭りを練り歩くのです。…結果的に見つかってしまいましたが」
「殺生な。無事だったのか」
「えぇ。元々賢い娘でしたから、上手いこと逃げ出して、継母が家に戻る頃には 何事もなかったように庭番についていたようです。焦って美しい靴の片っぽを落とすドジをやらかしましたけれど」
「靴を、落とす?」
あれ。どうしたのでしょう。
龍之介の顔が曇りました。
「ええ。その靴は後に商人の手に渡り、とある王族の手に渡りました。
誰に履かせても大きさの合わないその靴は、何か呪具のようなものに思えたのでしょう。これをどこで手に入れたのだ、盗品か、などと疑いを持った王は、その商人を捕まえて拷問致しました」
「……拷問」
「遂に祭りで拾い上げたのだ、と白状した商人を処刑にかけた後、靴の持ち主を探す催しが始まりました。いわば魔女裁判のようなものです。
その靴の適合者であった葉限は、美しい天女のような美貌によって王に見初められ、庶民の身でありながら王室に輿上げられました。
その祝いに継母も岩で頭を砕かれる処刑で命を落としましたとさ。めでたしめでたし」
すっかり話し終えて、久しぶりに口を動かしたのに疲れて大人しくしておりますと、龍之介は嫌に真剣な顔でこんなことを訊ねました。
「お前 シンデレラという話は知っているか」
「しんでれら?いいえ、女の子の名前は葉限ですよ」
「そうじゃない」
今度は私が何かを教わる番でした。
◆
【余談】
この話、本当にあります(真顔)
葉限(しょうげん)で検索してみてください笑笑笑笑
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伊織 - もう好き...!最後ウルっときましたよ。というか泣いちゃいましたよ。ほんと構成がお上手で...。芥川先生の作品たくさん使ってるの凄い好きです。千代の方も読んでるのですが作者様天才ですね。感動作品をどうもありがとうございます...! (2021年5月22日 18時) (レス) id: 399c3e6058 (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - コメントありがとうございます!!初めて書いた女主人公が蜘蛛(雌)ェ……とはいえ、実は人間だった頃が誰なのか、モチーフが居ますので、もしも暇だったら蜘蛛の前世当てクイズに挑戦してみてください笑笑 意外にも多くの方に読んでいただけて嬉しい…(芥川はいいぞ…) (2019年4月2日 11時) (レス) id: ea18c173c6 (このIDを非表示/違反報告)
多田野メガネ(プロフ) - どうも多田野です。千代の記以外の、それも女(雌?)主人公が新鮮でした(°▽°)突然の告白ですが、所々に芥川作品要素を垂らしていくマボ様が好きです。 (2019年3月27日 13時) (レス) id: d89d5986ef (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - ありがとうございます!!何も考えずに三時間で書いてみるチャレンジで、殊の外うまく書けたものなので完結させてみることにしました笑笑ギャグシリアス、展開などこれっぽっちも考えず、思いつきで書いております。とても短いお話ですが、最後までお付き合いください! (2019年3月25日 16時) (レス) id: ea18c173c6 (このIDを非表示/違反報告)
柘榴※惰眠愛してる(プロフ) - 新作おめでとうございます! (2019年3月25日 0時) (レス) id: cf0e41908a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アバンギャルド・マボ | 作成日時:2019年3月25日 0時