みんな大好き北さんの妹【稲荷崎】

急な旅立ち ページ3

　
時は少し遡る。中3の春。



　
『信介なに見てるの』

　
北「ん、バレーや。この前練習試合あってん。監督がビデオ撮ってくれたんや」


『へー高校バレーか。私も見たい』


北「ええで。隣おいで」
　
　
『うん』


　

　
これがきっかけだった。


　
なんていうか、カッコいいっていうか。尊敬っていうか。感動っていうか。
　

プロの選手の試合とは全く違った、高校バレー。
　
未完成だからこそ見えるそれぞれの個性がなんとも言えないくらいカッコよかった。
　
　

　

　
『…かっけー』


北「なんや、お兄ちゃんがカッコいいんか」


『…全部、全部が…カッコ…いい』


信介は嬉しそうにふっと笑った。


北「稲荷崎受けたら毎日これが見れるで」


信介は、前々から私を稲荷崎へ誘っていた。それも相当しつこく。
　
今までは鬱陶しいなくらいに思ってたけど、信介の言葉を聞いて、私の気持ちは高鳴った。


『…私、稲荷崎受ける』


北「ホンマに」


『うん。けどその前に、東京行ってくる』
　
　
　
　
　
　
　

北「え、なに言うてるん」


『中3始まったばっかやし、2月くらいまで休学する』


北「だから、そんなん許すわけないやろ」


『東京行って、高校バレー見るんや！学校に電話してくる！』


北「ちょ、A！」
　
　
　
　
　
勿論、親以外の誰もが私を止めた。けど、私の胸の高鳴りはどうしようもなかった。

こうやって思い立った時に行動に移さないと、私は絶対に後悔すると思ったんだ！



　


学校側は、中3の範囲のテストをして、全教科95点以上を取れれば許してくれると言った。

そんなの勿論合格。

　
　
　

　
　
私は一週間後に、兵庫を旅立ち、両親のいる東京へ向かった。

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