みんな大好き北さんの妹【稲荷崎】

かっこええ ページ18

次の日。


私は怒っていた。


昨日は、ただただ怖い気持ちがあったけど、目が覚めて結構腹が立ってきた。


まず侑の彼女でもなんでも無いし。勘違いで勝手に怒るのはキモいし。

それで人をあんな暗いとこに閉じ込めるとかありえないし。


それからの信介が鬱陶しかったし。


『おはよーございまーす』


私は体育館の扉を開けた。

誰かいるわけないけど。


まあどんだけ怒っててもマネはしっかりやらないとね。


「おはよーさん、昨日大丈夫だったん」


『ひっ…あ、侑か…びっくりさせないでよ、てかなんでこんな時間に？』


侑「練習や」


『朝練まであと一時間はあるよ？』


侑「自主練」


『へーすっげ』


会話に区切りが付くと、侑はペットボトルをネット側に並べ始めた。


『ペットボトルのとこにトス落とす練習？』


侑「せやで」


てかすご…全部ちゃんと落としてる。


流石高校ナンバーワンセッター…私の見たかったものを見せてくれる。


侑「A」


『ん？』


侑「暇？」


『まあ侑がネットとか張ってくれたし。みんな来るまで暇かな』


侑「スパイク打てへんの？」


『打てるよ、一応中学二年間やってたし』


侑「じゃあ俺のトス打ってや」


『いいよ、下手だけど』


スパイク打つの久しぶりだな。けど、ストレス発散には丁度いいかも。


『行くよー』


私は助走をつけた。


ネットからの距離はこのくらい。私が一番打ちやすいこの距離がいい。

ジャンプのコツは…

「小さいことはバレーボールに不利な要因であっても不能な要因ではないッ」

あの人を参考に…


フォームは今まで見てきて、研究し尽くしたフォームで。


よし、跳べた。



　
　
　

　

　
　
　

　
　
しかし、トスが来ることはなかった。
　
　
　
　
　
『え“』



　
　
私は勢いよく跳んだのに、そのまま着地するハメになってしまった。

　
　
　
　
『侑？』

　
　
　
　
侑「…かっこええ」

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