彼等とあの子。 ページ10
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その日、探偵社では会議が開かれていた。
福沢諭吉、国木田独歩、与謝野晶子、太宰治、中島敦、宮沢賢治、谷崎潤一郎、そして江戸川乱歩といった武装探偵社の主戦力が集まっている。しかし、そこにはナオミと鏡花の姿だけが見えなかった。
「“蒼の断罪者“についてだ。犯人が判った」
社長である福沢諭吉は乱歩に目を向ける。
乱歩は何処か気怠げに、ゆっくりと席から立ち上がった。
「さて……鏡花ちゃんはいないね？」
「はい、ナオミが連れ出してくれています」
谷崎が頷く。
乱歩は口を開いた。
「一連の事件の犯人は、清野Aだ」
清野A
泉鏡花に両親を殺された少女。
太宰と福沢以外の一同が、驚愕した。
「……そんな……どうして」
「彼女の目的はただひとつ。
両親を殺害した鏡花ちゃんを断罪すること」
乱歩の目が僅かに開く。
敦は肩を震わせ、絶句した。
それは他の社員も皆同じだった。
国木田は拳を握りしめ、悔しそうに唇を噛み締める。武装探偵社の社員が連続殺人犯を生み出してしまった。鏡花が法で裁かれていたら、清野Aは犯罪者を断罪する歪んだ殺人犯になどならなかっただろう。
「……そして、ここからが問題だ」
乱歩はいつになく神妙な面持ちで言葉を続ける。
「清野Aの後ろには強力な頭脳と武器を持つ“共犯者”がいる」
「……共犯者……」
「ああ。それも随分周到な奴だ。
清野Aが殺ったという物的証拠は一切残さず、街の監視映像も偽装し、絶対に彼女が捕まらないように手助けしている。僕じゃなかったら絶対に解らなかったよ！だから福沢さん褒めて！」
乱歩は凍りついた場の空気を壊すように、明るい声を上げる。しかし、それくらいではこの空気は和まなかった。
「……あ、あの。彼女、清野さんは捕まるンですか？」
恐る恐る、といった様子で谷崎が手を上げる。
その質問には乱歩ではなく、太宰が答えた。
「いや、“取引”を持ち掛けるのだよ」
「と、取引？」
「そう。取引。要はこれを脅しの種にして、鏡花ちゃんを諦めてもらうのだよ。“鏡花ちゃんへの復讐を辞めないのなら警察へ突き出す“ってね。逆に復讐をやめてくれるのなら警察へは云わないって」
良い計画でしょ？と太宰が嗤う。
しかし、国木田は不安を抱いていた。
親を殺され復讐の為だけに手を染めた清野Aが太宰の説得に応じるとは到底思えないからだ。
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