わたしの生きる意味。 ページ15
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「あ、もしもし〜？そうそう、あいつうざくてさ〜！本当ムカつくんだよね〜」
私と同年代であろう今夜の罪人が何も知らずに此方へ歩いてくるのが見えた。その口から発せられる言葉の下品さったら。触れられる距離まで来たところで、私は罪人の前に立ちはだかる。
「なっ、なに！？」
「榎本苗さん。あなたは身勝手な嫉妬でクラスメイトを屋上から突き落とし、殺害しました」
なのに、両親が政治家だという理由であなたは罪に問われなかった。
私は憎悪を込めて、拳銃を頭に突きつける。
引き金を引こうとした瞬間、そこまでだ、と聞き覚えのある声がした。
「……お待ちしておりました」
───武装探偵社の皆さん。
笑みを深め、彼らを見つめる。
あの時探偵社で会った包帯男と、麦わらの少年、眼鏡をかけた男性、そしてあの時私を睨んだ白髪の少年がいた。その中に、泉鏡花はいない。そんなに守りたいのか、35人殺しを。
「た、助けてぇぇ！」
私は罪人を引き寄せ、銃口を押し付ける。
さながら、今の私はドラマでよく見る人質を盾に取ったテロリストみたいだ。
「はははっ！大丈夫、君を警察に突き出すような真似はしない。君と“取引”をする為に、会いに来たのだから」
「……取引？」
「ああ。もう二度と鏡花ちゃんと関わらないと約束してくれたら私達探偵社員は君を警察に突き出さない」
は、と間の抜けた声が出た。
彼が何を云っているのか、全く理解が追い付かない。私が泉鏡花に関わらなければ人殺しで犯罪者の私を見逃すと云うのか？
「どれだけ───どれだけ私を小馬鹿したら気が済むのですか貴方達はッ！！」
自分でも嘗てないほど低い声が出た。
私が取引に応じると思っていたのか、包帯男は怪訝そうな反応を見せる。
「私は人殺しなのです。裁かれるべき人間なのです。それをあなた達は“見逃す”なんて……本当に可笑しい。ですが、そんなあなた達だからこそ、35人殺した非道な人間を受け入れられるのですね。……あなたも、人を殺したことがあるでしょう」
私はずっと感じていたことを、包帯男に問いかけた。包帯男は「だったらどうする？」と薄く笑う。その態度に、怒りを通り越して心底呆れた。
「どうもしませんよ。ただ、私は取引には応じません」
泉鏡花を断罪してから“自分を断罪”する。
それが、私の唯一の生きる意味
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