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子山羊の郵便 ページ49

それから数年して、十五歳。
この数年の間、情報の売買で地元の闇医者先生が上得意様になって、一年程前にマフィア首領に就任した時には、物語の根幹に関わる部分に大いに干渉してしまったなと自分が怖くなったが、今更どうしようもない。
マフィアの先代暴走で街は大きく傷付き、《羊》とマフィアの間に深い溝が生まれていた。

そんなある日、擂鉢街で爆発事故があり、マフィアの暴帝、先代首領復活の噂が流れ始めた。《荒覇吐》の噂も流れ、それに因縁を持つ中也はその噂の真相を確かめる為に単独でも動き始めた。

こっそり中也の後をついて行って見れば、丁度中也と太宰さんが出会うところだった。私がその場に着いた途端、黒い炎が噴き出し、先代マフィア首領の顕現と共に中也達中心に居た者が吹き飛ばされた。私はそんな中也の介抱をしようと降りたところでマフィアに囲まれ、大人しく中也と共にマフィア本部まで連行された。

中也は直接現首領である森さんの所へ連れていかれたが、私は人質として地下牢に連れていかれた。
それだと面白くないので、マフィアの黒服さんを軽く脅……交渉して私も首領の元へと案内させた。

重厚な扉を叩き、「失礼しまーす」と間延びした声で挨拶しながら部屋に入ると、そこには両手と腕、脚を厳重に拘束された状態の中也と、彼を異能で更に拘束している蘭堂さんと、ポートマフィアの現首領である森さんが居た。

「手前、A……ッ」
「やあ中也、面白い格好になってるね。鋼鉄製の枷とか随分と特別仕様じゃあないか。いやはや、羨ましい」
中也はギロリと私を睨み付けた。
「……何で手前も捕まってやがる」
「黒い炎に吹き飛ばされた君を介抱しようとしたら、怖い人達に囲まれて」
私は肩をすくめた。
「それで、態々自分も一緒に囚われたのか？」
中也は心配そうに私を見る。
「裏社会で女が捕虜になるって意味が分からねえ手前じゃねえだろ」
「御心配どうも。だが私もそこまで考え無しじゃあない。交渉の為のネタを幾つか握った上で捕縛されてる。常に優位に立てるようにね。知ってるだろ？」
「ハッ……」
中也は呆れた様に笑ってから苦虫を噛み潰したような表情をした。
「この場合、手前が云う交渉は脅迫と同義だろうが」
「あー、いいのかなー？ 《羊》のお財布握っている私にそんなこと云っちゃって！」
「チッ……」
舌打ちをする中也を横目に、私は手枷をジャラジャラと鳴らしながら部屋の奥へ進む。目的の人物が目を細める気配がした。

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