孤独の荘園４ ページ45
Aは笑顔だ。だが、その声色の中には自嘲めいたものが含まれていた。
「……どういう意味だ」
「そのままの意味だよ。私はこの体の持ち主じゃない。ま、正確には、元の人格の代わりに体を動かしてるんだけど」
「つまり、手前は二重人格って訳か？」
「……違う」
Aは小さく首を振る。
「居ないの、この体の主は。居なくなっちゃったんだよ」
その言葉には悲しみも怒りも無く、ただ淡々としているだけだった。中也には、それが真実なのか嘘なのか分からない。
「……死んだのか？」
「恐らくは。私は抜け殻になったこの体を使わせて貰ってるだけ。『私』が生きていたって証明なんて何処にもない」
「……」
中也は何も答えられなかった。その事実をどう受け止めればいいのか分からず、中也は沈黙するしかなかった。
「ああ、別に同情とか要らないよ。私元々は別の世界に生きてた人間だもの。この世界で生きていた痕跡なんてある訳が無いし」
「……何でそんなに落ち着いていられる」
漸く絞り出した言葉はそれだった。
「人生経験。人間二年生クンには難しいかな？」
Aはニヤリと笑う。
「……チッ」
中也は舌打ちすると、もう一度攻撃を繰り出そうとした。しかし、それは叶わなかった。
「最初からこの世界に居場所を与えられている君に解るわけがない」
先程までとは打って変わって、迷子のような寂しげな表情でAが云う。
「君は、此処で生きている。ちゃんと帰る場所がある。……羨ましいよ」
「…………」
「帰り、たいなあ……」
Aの瞳には涙こそ浮かんではいなかったものの、今にも泣き出しそうな雰囲気を纏っていた。
「皆に会いたい……」
中也は黙ってそれを見つめていた。Aはそれに気付くと笑みを浮かべた。中也は無理矢理に作った笑みだと感じとった。
「ごめんね、変なこと云って。忘れてくれ」
「……帰れないのか？」
暫くの静寂の後、中也が口を開いた。
「うん、帰れない」
「……それで態々俺の事を刺激して、殺し合いに持ち込もうとしていたのか。死ねば帰れると踏んで」
「否……本当に目的は君と話す事だよ。君達《羊》の体制は不安定なものだったし」
中也はその言葉を聞いて顔を顰めた。
「傷付けたのなら申し訳ないけど、優しい言葉で濁すのは
Aの瞳に嘘がない事を悟り、中也は押し黙った。
「まあでも……羨ましかったんだ、居場所があるのが。だから少し意地悪をしたというのもある」
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夢秋(プロフ) - 蒼さん» ありがとうございます！ 一歩間違えたら夢主ちゃん太宰さんに閉じ込められるくらい無茶してます。早く起きないかなー（どの口が） (6月21日 3時) (
レス) id: 9185832e78 (このIDを非表示/違反報告)
蒼(プロフ) - 主人公ちゃんんんん目覚めないと太宰さん泣いちゃうよ！？！？ついでに私も泣くよ！？(？)BEASTめっちゃ好きだけど！！作者様へ神作品です最高ですありがとうございます (6月13日 12時) (レス) @page50 id: 699f0917a9 (このIDを非表示/違反報告)
夢秋(プロフ) - いけるしかばねさん» ありがとうございます！ これからしばらくリメイクに入るので実質回想シーン→BEASTで夢主なかなか起きないことになります( ͡ ͜ ͡ ) (2023年2月3日 14時) (レス) id: 28dc9b7eb5 (このIDを非表示/違反報告)
いけるしかばね - ぬあぁぁああ起きろよ主人公！！いやbeastもいいけど嬉しいですけど！！！ 続き楽しみに待ってます頑張ってください！ (2023年1月31日 16時) (レス) @page50 id: c9b27d8eb7 (このIDを非表示/違反報告)
夢秋(プロフ) - 蒼月さん» ありがとうございます！！ イベントとか終わったらぼちぼちリメイクしながら再開します！！ (2023年1月24日 2時) (レス) id: 9185832e78 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夢野秋 | 作成日時：2021年11月1日 2時
