【文スト】濃霧と林檎？ 知ってたよ、此の野郎←【文豪ストレイドッグス】【太宰治】

Snow White ページ40

気がついたら見覚えのない路地裏で倒れていた。

やってしまった。
それしか言葉が出てこない。

渋澤さんちの龍彦さんという名の毒林檎を頭の天辺から爪先まで完食してしまったというのが正しいのか、本当の意味での『林檎自‘殺(異能による自死)』を完成させてしまったのか判らないが、どちらにせよどうやら私は死んだような状態にあるようだ。
普段なら目が覚めるまでの意識は泥沼に沈んだかのような状態なのだが、今は違う。はっきりとした思考が出来てしまう。
魂を乖離させすぎた。これはもう戻らないかもしれない。
そんな考えが渦巻く。

完全なる仮死状態。
まさに白雪姫だ、と自嘲の笑みが溢れる。

白雪姫は確か王子の接吻で目覚めるが、残念ながら私を接吻で目覚めさせてくれる王子様は存在しない。
それっぽい人物は太宰さんだが彼は兄だ。それに立ち位置的にはそれっぽい中也さんとは全く恋愛感情がない。兄妹よりも兄妹らしい関係だし、接吻するとしても唇以外だ。Ｑちゃんは弟のような存在だし、穢すわけには行かない。散れショタコン。

ここまで誰一人恋愛フラグが立っていないのは流石に笑けてくる。状況鑑みたら全く笑えないが。
この四年間で恋なんて全くして来なかったことがここに来て悔やまれる。なんならマフィアに加入してからだと考えると、七年間である。

彼氏いない歴＝年齢(＋前世)。あかん、三十は越える。










そんな巫山戯た事を考えている場合ではないだろうと思われるかもしれないが、考えていないと、どうしても、太宰さんの顔が浮かぶのだ。
私が倒れる度に、泣きながら私を抱きしめてくる太宰さん。
失うのが怖いと、神にでも縋るような格好で私を抱きしめた太宰さん。
その姿が浮かぶのだ。
今の私には起き上がって、苦しいくらいに抱きしめられながら謝ることもできない。
私よりも子供らしく、わあわあ泣いている彼を宥めることもできない。
そんな事実から目を背けたくなるのも、当然だろう。

御免なさい、兄さん。

届かない声は空に吸い込まれた。

却説、こんなところで止まっていても仕方無い。
立ち上がり、見慣れぬ服についた砂埃を払う。
意識を失って且つ生死不明の時に見慣れぬ場所に飛ばされるのは、元の居場所に戻るための試練というのが定番(テンプレ)だ。
それなら、精々足掻いてやろうじゃないか。

家族の元に帰るために。

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