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OH! MY BROTHERS!! ２ ページ38

「ねえ中也」
余りにも情けない声が、二十糎(センチ)程下に落ちる。
「私は、如何すればいい？ Aの為に、何をすればいい？」

折角街を守れたというのに、その場にAが居なければ意味が無い。
自戒のために、もう二度とAを傷付けないという誓の為に、四年前を忘れない為にあの墓地に行ったと云うのに。

あの時Aを引き留めていればこうはならなかっただろうか。
否、引き留めなければ敦君が間に合わず三人で澁澤を斃すことは叶わなかっただろう。決断としては正しかった筈だ。
だが、納得出来るわけがない。

「なァ太宰。Aが何故頭脳戦でも体術でも秀でているか知ってるか？」
中也は視線を合わせない。中也の視線は私の胸元にあった。
「それは、Aが優秀だからで……」
「まァそれもそうだ。確かに彼奴は優秀だ。手前みたいに地頭も良いし、なんでも熟す優等生型(タイプ)だ。だがな、彼奴のアレは努力の賜物なんだよ」
中也は拳を作った。
「彼奴はな、血の滲むどころじゃねえ、血反吐を吐くような努力を続けて来たんだ。体術だって、一時期は毎日のように俺の所に来て会得したものだ。剣技だって、姐さんのところで身に付けていた。知識を得る為に、首領のところで戦術や医療について学んでいた」
……知らなかった。
私はまだ、Aについて殆ど何も知らないのだと思い知らされた。
乾いた笑いが転がり出てくる。
「はは……私、まだAの事何も判って」
「彼奴の服装」
「は？」
「特に外套。何か気付かねえか」

黒い外套。マフィア加入時に森さんに購い与えられた大きめの黒外套。『桜桃』の任務や休暇を除いて毎日の様に肩にかけていた外套。
白い襯衣、黒い三つ揃い(スリーピース)の背広――スラックスは膝上丈のスカートに替えてある――に、赤紫色の石が嵌められたループタイ。そして黒外套。
黒外套のブランドは、私が森さんに与えられた外套と同じブランドではなかっただろうか。
「Aは手前に憧れ、手前に認められる為に手段を選ばなかった。それが彼奴だ」
手前と和解した今はそうでもねえが一時期のAは芥川より酷かった、と中也は続ける。
「如何すればいい？ Aの為に何をすればいい？ ……ンなモン、判り切った事だろうが！」
中也は私の襟首を掴む。
「彼奴の傍に居ろ！ ただただ彼奴が目ェ覚ますのを信じろ！」
強い力で引き寄せられる。

「手前は、Aの兄貴だろ！！」

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