OH! MY BROTHERS!! ページ37
「……また来るぜ」
夢に沈む少女に暫しの別れを告げて戸を音を立てぬように閉じる。
絨毯に革靴の音が吸い込まれる。間接照明の為か薄暗い廊下は、Aが目覚めるまでの空白を表すように長く伸びていた。
向こう側から砂色の外套を纏った影が近付いてくる。見覚えのある歩き方。嫌悪する奴の歩き方。
「……太宰」
「中也……。Aとあまり背丈が変わらないもんだから糠喜びしそうになったじゃあないか」
表情を変えず、其奴は嫌味を口にすると溜息を吐いた。
「はっ、何時ものキレは如何した。全く響かねえよ」
「……」
「つーか、何で手前が此処に来てンだよ。此処はマフィアでも一部の人間しか入れねえ筈だ。探偵社員はお呼びじゃねえぞ」
「森さんに許可は取ったよ。正式な許可をね」
太宰は懐から紙を取りだした。きちんと『森鷗外』と首領の筆跡で
「それに駄目かい？ 兄が妹の見舞いに行くのは」
「……駄目な訳ねえだろ」
そう返せば、Aと同じ形の目が緩やかに細められた。
こうして見ればよく似ているな、と今更ながら思う。
「未だ目覚める様子は無い、か」
俺の様子からそう結論付けた太宰は肩を落とした。Aと同じ色の目が伏せられる。
「目覚めねえ理由、知ってんのか？」
「心当たりは」
太宰は言葉を切ると、長い息を吐いた、
「……Aの異能の副作用、それの後遺症のようなものだ」
「異能……」
澁澤が起こした霧の夜、Aがあの場に居たことで彼奴に異能がある事が判明した。マフィアの上層部は誰ひとりAに異能が有る事を知らなかった。Aがマフィアに加入して七年、誰ひとり知らなかったのだ。
Aの事だ、汎用性の高い異能であれば惜しみなく使うのであろう。彼奴は仲間が傷付けられる事を決して許さない。身内への愛情や慈悲を持つと同時に、敵対者は『桜桃』を使って完膚無きまでに叩きのめす冷酷さも持ち合わせている。太宰が組織を抜けてからは、表舞台に立つ度にその冷酷さの面が目立つ様になっていたが、それは身内愛そのものだった。そんなAが、組織を貶める為に異能を隠匿する筈が無い。
「あの子の異能は精神操作系なんだ。受信者の五感を乗っ取ってしまう異能。強力な反面、彼女自身に代償が伸し掛る」
「代償か。それは？」
そう訊くと、太宰は唇の端を引いた。
「今の状態……って訳か」
太宰は何かを堪えるように頷いた。
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夢秋(プロフ) - 蒼さん» ありがとうございます！ 一歩間違えたら夢主ちゃん太宰さんに閉じ込められるくらい無茶してます。早く起きないかなー（どの口が） (6月21日 3時) (
レス) id: 9185832e78 (このIDを非表示/違反報告)
蒼(プロフ) - 主人公ちゃんんんん目覚めないと太宰さん泣いちゃうよ！？！？ついでに私も泣くよ！？(？)BEASTめっちゃ好きだけど！！作者様へ神作品です最高ですありがとうございます (6月13日 12時) (レス) @page50 id: 699f0917a9 (このIDを非表示/違反報告)
夢秋(プロフ) - いけるしかばねさん» ありがとうございます！ これからしばらくリメイクに入るので実質回想シーン→BEASTで夢主なかなか起きないことになります( ͡ ͜ ͡ ) (2023年2月3日 14時) (レス) id: 28dc9b7eb5 (このIDを非表示/違反報告)
いけるしかばね - ぬあぁぁああ起きろよ主人公！！いやbeastもいいけど嬉しいですけど！！！ 続き楽しみに待ってます頑張ってください！ (2023年1月31日 16時) (レス) @page50 id: c9b27d8eb7 (このIDを非表示/違反報告)
夢秋(プロフ) - 蒼月さん» ありがとうございます！！ イベントとか終わったらぼちぼちリメイクしながら再開します！！ (2023年1月24日 2時) (レス) id: 9185832e78 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夢野秋 | 作成日時：2021年11月1日 2時
