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死の果実へと２ ページ30

「国木田さんは大丈夫ですか？ 敦君達曰く負傷していると……」
「ああ。かなり負傷していた。応急手当だけして探偵社に置いてきた。道すがら与謝野女医と合流して援護した。その後女医を国木田の元へ向かわせたから今は回復している筈だ」
織田作さんの銃の腕前は作品内でも上位だ。BEASTの織田作さん曰く、『目を閉じて撃っても標的に命中する』。きっと一発であの赤い結晶を撃ち抜いたのだろう。織田作さんが居るだけでこの霧の中もこれだけ楽になるとは。

「A、太宰には会えたか？」
織田作さんは周囲を警戒しながらも私に訊く。
「ええ。兄なら無事です。この状況までは予想通りのようですが、これから先は『彼ら次第』だと」
「敦の事か？」
「恐らく。後は芥川君と鏡花ちゃんですね」
安全を確認して進む。時折織田作さんの異能が発動して危機を回避する場面も多々あるが、順調に足を動かしていた。
「新しい『双黒』か」
織田作さんはやけに納得したように呟いた。
「兄から聞いているので？」
「芥川の事は太宰から聞いていた。そして敦も太宰が拾ってきた。太宰が目に掛けているという事はそういう事だろう」
太宰さんの理解者だ……。これぞ織田作……。織田作が生きてて良かった。

密かに感動していると、目の前に黒い影が飛んで来た。それを受け止める。
天魔纏鎧中の芥川君だった。
「Aさん……」
芥川君は私を見ると、直ぐに自分が飛んできた方向を睨み付けた。視線を追えば、白い人外がそこに立っていた。丁度、澁澤に蹴り飛ばされた場面のようだった。
「この魍魎め……」
私は芥川君の体勢を立て直させる。
「状況は？」
「如何やら死を通過しているとの事。此方から触れる事は不可能な上――」
芥川君は咳をする。相当、消耗している事が目に見えて判る。
「――あれの攻撃は当たります」
芥川君は忌々しげに澁澤を睨み付けていた。

鏡花ちゃんの夜叉白雪が刀を構えて飛び出す。姿勢を低くして澁澤に向かって駆け出した。夜叉の白刃が空気を掠めて、澁澤がそれを叩き折る。

全ての異能に抗う者とされる敦君が辿り着くまで、私が二人を持ち堪えさせなければ。
「……芥川君、少し休め。織田作さん、芥川君がある程度回復するまで頼みます」
「ああ」

――『道化の華』。
手始めに自分の痛覚を遮断する。本質である精神操作で自己暗示(ドーピング)をし、リミッターを無理矢理解除する。
私は決意と共に、澁澤の背後目掛けて走り出した。

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