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幕は降りず２ ページ27

「説明、面倒だなぁ……」
私は太宰さんに凭れる。

自分から首を突っ込んだとは云え、組織幹部(上司)に異能を隠していた事がバレたんだ。組織への忠誠心が一段と高い中也さんの事だ。首領への報告は現状ほぼ免れないであろう。
中也さんにバレる分にはいい。だが首領だけは駄目だ。
横浜を、この世界を守れるからマフィアにいるだけで、私は組織への忠誠心など毛ほども持ち合わせていない。異能を隠していたことがバレれば、ここまで露見しそうだ。
最悪処刑されるかもな、私。

「中也の事だ、納得させられれば森さんには報告されないよ」
「それが一番難しいんです」
私は凭れたまま太宰さんを睨み付けた。
身内ほど、話す情報の取捨選択が難しい相手はいない。

ああそうだ、外套の事、どうしよう。六年前の首領からの贈呈品(プレゼント)。龍頭抗争終結時にご褒美として購って貰ったあの外套。今迄気に入って着ていたから、いきなり着なくなったら不自然だ。それを突かれてしまえば――。

そう考えを巡らせていると、私の不安を感じ取ったのか、太宰さんは空いた手で私の頭を撫でた。
「最悪森さんに露見しても、あの人は君を切り捨てない」
「……何故そう云い切れるのです？」
「君は異能無しで、齢十にして準幹部まで上り詰めた秀才だ。君の貢献で組織は安全に利益を産み続けてきた。そんな君を、太宰Aを容易に手放す程君の組織(マフィア)の長は愚かじゃない」

確かにそうかもしれない。だが、その首領は私よりも何百倍も優秀な太宰さんを切り捨てた。原作でも、あの秘密の会合でも言及されていた様に、首領は太宰さんの『マフィア首領簒奪』を危惧し、『ミミック』と織田作さんを利用して太宰さんが組織を去るように仕向けた。
組織への忠誠心が皆無である事が露見すれば、私も同じようにならない保証はない。
……私には家族(弱点)が多過ぎる。

「首領は組織の麒麟児(優秀な手駒)である貴方すら手放したのですよ。貴方と比べ遥かに劣る私がそうならない保証が何処に」
「この街を愛する心」
太宰さんは私の言葉に被せて云って来た。
「え？」
太宰さんは私の疑問の声に返答せずに続けた。
「……ねえA。私が何故マフィアに入ったか知っているかい？」
知っている。知っているが、太宰さん本人から直接聞くのは初めてだった。
私は開き掛けていた口を閉じ、大人しく耳を傾けた。

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