【文スト】知ってたよ、此の野郎←【文豪ストレイドッグス】【太宰治】

番外編 四月莫迦 ページ28

「皆ー、元気ー？」
「はーい」
「お姉さんは元気元気！ 皆、今日は何の日か分かるかなぁー？」
「エイプリルフール！！」

何だこの茶番。
私は部下に何をやらせてるんだ。

閑話休題。

と云う訳で今日はエイプリルフール。
前世では色んなゲームアプリが沢山企画してたな。
迷ヰ犬怪綺談では皆が天使と化してた。うわあああ、迷ヰ犬怪綺談やりたいよー。皆やろうぜ、迷ヰ犬怪綺談。

そう云えばエイプリルフールって午前中だけ嘘吐いていいんだよね、確か。
よし、誰に仕掛けようか。嘘の内容も考えないと。相手を傷付けるものはアウトだし。

お、中也さんだ。取り敢えず話し掛けるか。
「中也さん！」
「Aか。如何した？」
「私、中也さんに隠してた事あって……」
「何だ？ 云ってみろ」
食いついてる食いついてる。

私はそれを見て、少し恥ずかしそうに、そして罪悪感が混ざっているかのように云った。
「じ、実は僕(・)、男なんです」
勿論真っ赤な嘘である。
「……そ、そうだったのか」
中也さんは罪悪感に塗れた表情だった。
「だったらあの時、その場できちんと手当てしてやれば良かった」
「あの時って、僕が大怪我した訓練の？」
私がそう問うと、中也さんは苦虫を噛み潰したような表情で、
「嗚呼。男だって知ってたらその場で服脱がせて手当てしてやった。そうしたら怪我はもう少し早く治ったかもしれねェ。少なくとも医務室迄移動する間、傷口が外気に触れることはなかった訳だしな」
と云った。

やば、優しい。何か物凄く申し訳ない。もうネタばらししたい。
だが耐えろ私！ もう一つやってみたい事が有るんだろ！ 頑張れ私！
「後、中也さん……」
「今度は何だ？」
「今日だけでも……お兄ちゃんって呼んでいいですか？ 無論プライベートで」
此れは半分本気。一回でもいいから中也さんに『お兄ちゃん』って云ってみたかった。
兄より兄らしい中也さんに。
『お兄ちゃん』と云う存在が欲しかった。家族らしい家族が、欲しかった。

「……嗚呼、構わねェ」
彼は微笑んでくれた。
そして――。
「だが、今日だけで良いのか？」
と私の頭をぽんぽんと撫でた。
私の心中を見抜いていたのだろうか。私は少し泣きそうになった。願いが叶った事と、中也さんの心遣いに。
「……じゃあ此れからも呼ぶね、お兄ちゃん！」

この後ちゃんとネタばらしはした。中也さんは困惑し乍も笑って許してくれた。
でも流石に精神年齢的にキツいので、兄さんで！

番外編 四月莫迦 完

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