進まぬ時の中で ページ24
モノクルを掛けた男の絵とその下に『Lupin』という文字が筆記体で書かれている古びた看板がチカチカと光った。
戸を開けると、夜の静けさを表すかのような寡黙な常連客達が居た。尤も、私もその内の一人なのだが。
私はいつものカウンター席に座った。
「マスター、いつものを」
そう云うと、カラメルで色付けされた飴色の液体を置かれた。ミントと輪切りのレモンが浮かんでいるそれはジンジャーレモン、詰まりはジンジャーエールである。
――私はまだ
私は其れを一口飲み込む。生姜と炭酸が絡まった独特な辛さが舌を焼くが、その辛さに虜になってしまう。
やはり此処は落ち着く。
古びた店内と寡黙な常連客。
ウィスキーやカクテル等の高級感のあるアルコールの香りだけでクラクラと優しく酔う程、裏社会の緊張感を忘れてしまいそうになる。
――ブランデーでも呑んでしまおうか。
甘い誘惑に駆られるが、頭を軽く振りまた一口飴色を飲み込んだ。
そう云えば、ブランデーはかなり度数が高い。初めて飲むなら低い物でないと。私みたいなお子様には甘酒がお似合いだ、だなんて場違いな事を考え、もう一口飲んだ。
此の止まったような止まっていないような曖昧な
私は銅製の酒杯に入った飴色をちびちびと飲み乍、ワインレッドのカバーが被せられた小説を取り出し、栞の挟まった頁から読み始めた。
そこに、亦客がやってきた。
私が彼をこの店で見るのは初めてだった。
否、正確に云うと、
彼は聴いていて心地の良い声で、だが私にとっては耳障りな声で、
「マスター、いつもの」
と云い、私の隣に座った。
どうして。
「……君も居たの。君、酒の匂いは好かないって云っていたじゃあないか」
彼は硝子製の酒杯を弄び乍云った。硝子と中の酒がキラキラと光を反射させている。
「安物の酒の匂いが苦手なだけです。ウィスキーやカクテル等の高級な匂いは落ち着きます」
「君は
何方かと云えば美食家なのは貴方でしょうに。
中の人的な意味では。
脳内で「トレ!!! ビアンッ!!」と某喰種の声が響いた。
其れに顔を顰めつつ、
「さあ?」
と云うと、会話が途切れた。私は視線の先を小説に戻した。
暫くの静寂の後、亦入口に客がやってきた。
639人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
【文スト】三者鼎立? 知ってたよ、此の野郎←【文豪ストレイドッグス】【太宰治】...
場地(妹)は超生物の生徒 II
もっと見る
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品が参加のイベント ( イベント作成 )
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
サングリア - いえのきあさん» 判りました!定期考査頑張って下さい。私も今日から考査です…(´-ω-`) (2018年11月27日 7時) (携帯から) (レス) id: 5b0fbd2365 (このIDを非表示/違反報告)
いえのきあ(プロフ) - サングリアさん» ありがとうございます!今はテストや課題があってなかなか更新できませんが頑張ります!終わりのセラフもテスト終わったらぼちぼち買うので、お待ちくださいませ! (2018年11月26日 22時) (レス) id: 75f23159f6 (このIDを非表示/違反報告)
サングリア - 黒の時代…更新頑張って下さい! (2018年11月26日 16時) (携帯から) (レス) id: 5b0fbd2365 (このIDを非表示/違反報告)
サングリア - 長くてすみません…(´-ω-`)出来たら2つ宜しくお願いします!更新頑張って下さい (2018年11月24日 7時) (携帯から) (レス) id: 5b0fbd2365 (このIDを非表示/違反報告)
サングリア - クルル、クローリーなどの上位吸血鬼に気に入られて心配される。吸血鬼にしようとしている。渚は四鎌童子、アシェラに出会い、話をしたことがある。四鎌童子と一緒に3年間行動した。渚はその事を覚えていない。かなり謎に包まれた渚の過去 (2018年11月24日 7時) (携帯から) (レス) id: 5b0fbd2365 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:夢秋 | 作成日時:2018年2月10日 2時