新入生 ページ7
◇
「…俺たちは全員、本気でバレーやってる」
そんなこと分かってる。
私はそれを一番近くで見てきた。
そう言い返したくなるのをグッと堪えて、黒尾の次の言葉に耳を傾ける。
「仮に今日集まったやつ全員入部したとしても
足並み揃えてみんなで練習は無理だ」
それじゃ全国には行けないと私を説得するように話す黒尾に、でも今日みたいなやり方じゃ誰もバレー部には入らないよと少し声を張っていう。
「っ、じゃあ、この際正直に言いますケド
今まで少数精鋭でやっきたウチの質のいい練習は、
大人数じゃ不可能なんですう！」
「っ〜〜！私だって！
人数を増やすことだけ考えてる訳じゃないですう！」
運動未経験者の子や初心者に合わせた別メニューを作るにしても、場所の問題や経費のことは悩みが尽きないと思う。
「でも、私達が引退した後はどうすんの！！」
このまま3年が引退しちゃったら、私たちは良いけど下の代が困るじゃん！
スイッチが途端に冷静な話し合いは吹き飛び、いつの間にかヒートアップした言い合いは、わからず屋！頑固者！なんて意味の無いものに成り代わる。
「「…」」
そして、ゼェハァと呼吸を乱しながら、しばらくの沈黙が私たちの間で流れていると、意外な人物があいだを割って口を開いた。
「…なんで2人ともそんな極端なの？」
声のした方に顔を向けると、呆れたような顔をする研磨が、犬岡たちが来たから呼んでこいって言われたと愚痴を漏らす。
「少なくとも、
今年は経験者が3人も入ってくれた訳だし」
一旦、落ち着いて話しなよとそそくさ体育倉庫から出ていった研磨は、夜久たちに上手く言い訳してくれているようだった。
・
「…ごめん。黒尾が初心者だから駄目って
言ってるんじゃないの分かってる」
色々熱くなり過ぎましたと謝ると、せっかく頑張ってくれたのに悪かったと、少し分が悪そうに黒尾も謝ってくれた。
「じゃ、これで喧嘩はおしまいってことで」
「おう。」
研磨のおかげで嫌な拗れ方をしなくて良かったとホッとしていると、一年も待ってるしそろそろ行くかと扉に向かって歩きだす。
「これでウチの優秀なマネが
190以上の奴連れてきてくれたらなー」
「無理言うな」
◇
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作者名：西川あや | 作成日時：2022年10月7日 1時
