進路 ページ40
◇
「黒尾でしょ、みんなに余計なこと言った犯人」
「オイオイ...犯人呼ばわりは無いだろ」
練習後、一目散に事の発端であろう人物の元へ向かうと、人気者〜と茶化すように手をぱちぱちと叩く。
このっ！と頭を叩いてやろうと思ったが、後輩たちのいる場所で色々話をする訳にも行かないので、黒尾の手を引いて私は体育館を出た。
・
「みんなになんて話したの？ 内容によっては許さないよ」
「そんな怒んなって」
体育館を出て少し歩き、人通りの少ない裏の通路についてから、私は黒尾の手を離し、目を細めて軽く睨みつける。
ただAは進学希望だし、部活来れなくなるかもなーって話をちょこっと。と少し申し訳なさそうに白状した黒尾に、なんでまたそんなこと…と私は深くため息をついた。
「悪かった」
そう言ってすぐさま謝る黒尾は、ジャージのポケットに入れていた手を出して、近くにあった階段を二段ほど降りてから、この通りっ！と直角に近い完璧なお辞儀をみせる。
素直に謝罪されてしまうと、これ以上怒れる訳もなく、許すという意味を込めて、頭をあげよとふざけて言った。
「黒尾は部活のことだけ考えなよ。
余計な心配なんかしなくていい」
「余計じゃない」
「え？」
少し咎めるように私を見つめる黒尾は、真っ直ぐ私の目を捉えていて、階段の段差によって身長差がないせいで、私の視線の逃げ場がなくなる。
「お前さ、人の悩みのためにはすぐ無茶する癖に
なんで自分のことは余計だって思っちゃうワケ？」
そんなに俺は頼りないかと目を伏せる黒尾に、私は勢いよく首を横に振って否定する。
ただ私のことで負担をかけたくなくて...と説明すれば、そういうところあるよなと少し諦めたように笑って、1ミリも負担なんかではないと言った。
「ありがとう、黒尾…」
絶対に部活も勉強も両立してみせるから！とガッツポーズを作って見せると、黒尾は深く頷いて、お互い勉強頑張ろうなと笑う。
「俺も進学希望だし」
「は、？」
…進学ってスポ薦だよねと恐る恐る聞く私に向かって、黒尾は平気そうな顔で一般ですけどと口を開いた。
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作者名：西川あや | 作成日時：2022年10月7日 1時
