進路 ページ39
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「やめないよ」
そう私がもう一度口を開くと、一気に場は静まり返り、皆はあっけに取られた顔で見つめてくる。
恐ろしく静かな空気が三秒ほど流れたあと、良かった〜と笑顔で肩を組む後輩の姿を見て、これだけで残った意味があったんじゃないかと、少し鼻の先がツンとした。
「一緒に春高行くって約束したでしょ？ 」
右手を握りしめて前に突き出し、見せてよ、全国。とみんなに向かって拳を出すと、やるぞ！頑張るぞ！と力強く元気な表情を見せてくれて安心した。
「っ次こそ、全国連れていきます！」
そう虎が力強くこたえると、じゃーそろそろ練習しなきゃだなと、先程まで黙っていた三年三人組がのろのろとこちらに近づいて来て、頃合いだとでも言うように事態を上手く収めようとしている。
後輩達をいじめてこんな状況を作り出したのは、恐らくヤツだが、私はグッと責めたい気持ちを抑えて、さあ！練習練習！と一年生たちの背中を押した。
「…ありがとな」
私が横を通り過ぎる瞬間、トンと肩に手を置く黒尾。
少し驚いて振り返ると、残ってくれてありがとうと海も私に笑いかける。
「Aがいてくれると心強いよ」
「ベンチが賑やかになるしな」
部員からマネージャーへ感謝を伝えるという感動のシーンのはずが、ちゃちゃを入れてくるチビ夜久が、空気を読まずに私の肩に腕を載せた。
「はい？誰の声がデカいですって？」
「褒めてんだって」
「あっ、あざっす」
そして、休憩時間はとうに過ぎているのに、隠れて様子をみまもってくれいた直井さんに声をかけに行き、無事練習は再開された。
◇
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作者名：西川あや | 作成日時：2022年10月7日 1時
