進路 ページ35
◇
「お前が入部してきた時、問題ばっか起こすわ
言うことは全然聞かないわ。本当に大変だった」
他の先生方からも一条には気をつけろなんて言われてな…と懐かしむ監督に戸惑っていると、監督はにっこり微笑み、でもそんなお前が今は、部内の雰囲気を整え、柔和させていると言った。
「…お前の将来のことを考えれば、
引退を進めてやるのが良い教師なのかもしれない」
そう言って、廊下で待つ担任を一瞥した猫又監督は、私の目を真っ直ぐに捉えて、…でもなと言葉を続ける。
「他人の意見で物事を決める奴は、
失敗した時、後悔した時、必ず人のせいにする」
あの時、ああすれば良かった。
やっぱりこうしておくべきだった。
人間ってのは、自分で決めたことは意地でもやり遂げるもんだ…と小さく呟く猫又監督に、グッと気持ちが溢れそうになって口を結ぶ。
「…お前が後悔しない選択をしなさい」
そう家族みたいに暖かい眼差しを私に向ける猫又監督。
そんな猫又監督をじっと見て、しばらく床とにらめっこした私は、ゆっくりと顔を上げて向き直った。
「部活前、
いつも図書館で受験勉強をしている子達を見てました」
その子たちは私が部活をしている時間も勉強しているのだと思うと、正直凄く焦って、選手でもない私が残る意味なんてあるのかなって、心のどこかでは考えていたんだと思います。
周りからもきっと、ただのマネージャーなのに馬鹿だなって思われてるかもしれない。
「それでも私は、部活を続けます」
誰かのためとかじゃなくて、私が全国に行く皆の姿を見たいから
馬鹿だって笑われてもこの気持ちだけは変わらない…と、キュッとスカートの裾を握りしめながら、真面目な顔で話を聞いてくれる猫又監督に、ずっと心の中に募っていたことを伝える。
「私がみんなと春高に行きたいんです」
そう決めたからには勉強も手を抜かないし、周りにどう思われようが、なんと言われようが、バレー部のマネージャーとして胸を張って頑張っていく。
思わず立ち上がってそう宣言すると、監督には私の考えなどお見通しだったようで、いつもみたいにわっはっはと豪快な笑い声が教室に響いた。
◇
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作者名：西川あや | 作成日時：2022年10月7日 1時
