東北遠征 ページ18
・
ピーッと試合が始まる笛がなると、研磨が安定したフローターサーブを打つ。
烏野は誰が最初に打ってくるのかなーなんて、飛雄がセットアップに入るのを見ながら考えていると、こっちのブロックが飛ぶのより先に、既にボールはこちらのコートに落ちていた。
「……はあ！？」
私だけじゃない、みんなも驚いた様子で相手コートの10番を凝視する。
全く大袈裟なんかじゃなくて、とんでもない光景を目の当たりにして、コート内は動揺したまま烏野の先制点で次のラリーが始まった。
一点、二点と順調に点数を重ねていく烏野に対して、隣で嬉しそうに笑う猫又監督がチラリと視界に入る。
「あんな速いトスよく打てますね…
相手の10番の子」
なんて無茶な…と得点を書き込むのも忘れてコートを眺めていると、特にすげえのはセッターだと猫又監督は飛雄に視線を向ける。
「烏野のセッター、」
ネット越しに隣のコートをみれば、飛雄が意気揚々とトスを回し、チームメイトと不器用ながら喜んでいる姿が見える。
徹たちから聞いた昔の話など面影がないほど、楽しそうにバレーをする飛雄に、私は鼻の奥がツーンと痛くなった。
「…よかったね」
「なにが？」
感傷的になってポツリと独り言が漏れると、横から空気の読めない返答が来る。
ギョッとして振り向けば、犬岡と交代した夜久が不思議そうな顔で私を見ており、いやーうーんと微妙な反応を示す私から視線を外すと、手元を覗き込んだ夜久が驚いたようにバインダーを掴んだ。
「っおま、6点から進んでねえじゃん！」
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1553人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：西川あや | 作成日時：2022年10月7日 1時
