東北遠征 ページ14
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「…」
半ば強制の励まし役だな…と、こちらにガッツポーズを送ってくる最低人間に軽蔑の眼差しを向ける。
しかし、普段より口数の少ない灰羽が気になっていたのは事実だと自分を納得させ、私は早速、デカい灰羽の横に無理やり座りこんだ。
「灰羽、珍しく静かだね」
もう外はすっかり真っ暗で、帰るのもダルいねーなんて在り来りな話を振れば、別にと素っ気ない返答が帰ってくる。
そんな灰羽に、そんなに残って基礎練がイヤ？とズルい聞き方をすれば、俺も試合がしたいですと素直な本音を小声で呟いた。
「うん。
でも、試合するにはもう少し練習しないと」
高校から始めたにしては灰羽は上達が早いけど、こればっかりはやっぱり積み重ねた年月がものを言う。
夜久も言ってたけど、今は試合を見てるより大事なことだと子どもに噛み砕くように話せば、灰羽はわかってるけど…とまだ納得はできない様子。
本当に子どもみたいに唇を尖らせて拗ねる灰羽に、私は仕方ないが最終手段を提案した。
「じゃあ私も残るよ」
「え？」
それで灰羽と手白の自主練に付き合う。
独断で決められないから監督と要相談だけど、帰ってきた皆をビックリさせよう！と笑いかければ、…なんでそこまでと灰羽は目をぱちくりさせる。
「だって、灰羽が楽しくバレーできるのが一番だもん」
それで灰羽が我慢できるならの話だけどねと付け加え、どう？と灰羽に顔を向ければ、じっと私の顔を見て、小さく首を横に振った。
「…俺、今回の遠征は大人しく留守番してます」
ワガママ言ってごめんなさいとやけに素直になり出す灰羽に違和感を抱いていると、その代わり…と真剣な表情で言葉を続けた。
「灰羽って呼ぶのやめてください！」
「…え？」
二年生だけ名前呼びなのズルいと可愛いことを言い出す巨人に、私も思わず愛が炸裂する。
「っもう！可愛いやつめ！」
いくらでも呼ぶわ！リエーフ！と訳の分からないノリで盛り上がると、どこからか湧いてきた犬岡が俺も俺もと騒ぎ立てる。
じゃあ一年生と仲を深める良い機会かと、私は芝山と手白のことも名前呼びをすることになった。
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作者名：西川あや | 作成日時：2022年10月7日 1時
