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勿論、この青年がちゃんと魔法を使える前提での話だが、晴れていた天候が突如霧で覆われたり、これだけの騒ぎを起こしても人が誰も通り掛からない辺り、その可能性は案外濃厚である。
極め付けは、青年はあくまでも実行犯であり、主犯格は別に居る所だ。“たい”と呼ばれる人物が何者かは定かではないが、もしかしたら魔女である可能性もある。それか、魔法の存在を信じている何処かのイカれた野郎の可能性も無くわないが、もし魔女が主犯格だった場合は、この男──メルヴィンは如何するのだろうか。彼が探している魔女が必ずしもその主犯格と同一人物であるとは限らないが、万が一にもそうであったら……。
「どう言う形であれ、此奴の背後に魔女が居るのは確かだろう……どうする?」
「どうするも何も……でも、こんなにも怯えてるんだし、助けた方が……」
「失敗した、殺される。彼奴に、アイツ、ア……ころっ、あぁ!!」
「!?」
先程まで同じ言葉しか繰り返さなかった青年が、とつぜん頭を抱えて苦しみ出す。メルヴィンが慌てて青年の近くに駆け寄り、背中を摩る。切り裂き魔にそんな親切な行動は命知らずにも程があるが、しかし、青年は頭を抱えたまま強襲する事は無かった。
暫く背中を摩っている内に、メルヴィンは違和感を感じる。青年の服がじっとりと濡れていたのだ。手を離し掌を見ると、そこには何故かべったりと血が付着していた。朱肉にでも手を押し付けた様に真っ赤に染まった手に、思わず大声を上げる。
「うわぁぁあ!?」
「どうしっ……ちょっと待て、何で全身から流血してるんだ!?」
ロベルティーネがその異変に気付いた時には、青年の周囲に血溜まりが出来始めており、服は赤黒く染まり、顔は血涙、鼻血、吐血など、穴と言う穴から流血してぐちゃぐちゃになっていた。
そこから徐々に霧が晴れ始める。景色が鮮明化されると同時に、周囲に転がっていた他二人の男の遺体が確認出来たが、その身体が徐々に溶け始めたのだ。蝋燭の様に皮膚や内臓、全てがドロドロに溶けていく様子に、メルヴィンは汚れるのも構わず手で口を覆う。
「嫌だ、助け! 死にたく、な……助けて、嫌だ、嫌だ!」
青年は立ち上がると、頭を抱えながら、血と吐瀉物が混ざる地面をバシャバシャと歩き、少し歩いた所で再び膝をついた。
「いいやや、ししにに……死ねよ嫌だ、使えな死にたくない」
青年の声が二重になる。誰かと一緒に喋っているかの様な振る舞いに益々二人は困惑する。
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十二月三十一日(プロフ) - づみさん» 有難う御座います。読んで頂き光栄です。更新頑張りますので、今後共宜しくお願いします。 (2018年3月3日 2時) (レス) id: 70aae954fa (このIDを非表示/違反報告)
づみ(プロフ) - お話がとても好きです、更新たのしみにしています。頑張ってください〜 (2018年3月2日 16時) (レス) id: 688586594f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:十二月三十一日 | 作者ホームページ:
作成日時:2018年1月18日 21時