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◆第III章「人形の刻印」 01 ページ23

次の角は右へ、その次の角では左へと、二人は約数十分程こうしてジグザグと道を進んでいた。来た道とは全く正反対の、まるで居城から遠ざかっている様なルートを歩く彼女の行動に、メルヴィンは遂に疑問を投げ掛ける。

「ねぇ、なんでさっきからこんな複雑なルート通ってるの?」

 青年の素朴な疑問に、ロベルティーネは少し考え込む素振りをするが、すぐに口を開いた。前へと運ぶ足は、依然速いままだ。

「……誰かに後を付けられている」
「え!」

 事実を伝えられた彼は大声で驚くが、すぐに口を塞ぐ。 その後、気休め程度に「ごめん」と呟くが、ロベルティーネは気にした様子も無く前へと進む。メルヴィンは恐る恐る後ろに視線を移してみるが、そこには誰も居らず、影も形も追ってくる様な気配は何も感じられなかった。と言うよりも、彼がそう言った事に慣れていないのだから、当然と言えば当然である。

「さっきから巻こうと試みているんだが、何故か行く先々でかならず追ってくる。それなのに、姿が全く見えない」

 憎たらしそうに彼女も後ろに目線を向けるが、やはりそこには誰も居ない。しかし、追ってくる気配は感じるらしく、煩わしそうに眉を顰める。何だかオカルトチックな展開になっている──事実、隣に吸血鬼がいるのだから、幽霊だっている可能性は否定出来ない。但し、ロベルティーネが、その非科学的な物を信じるかどうかは別問題だ──が、彼女は今五感で感じている物を信じ、狭い路地を突き進む。
 だが、すぐにその歩みは止めざるを得なくなった。

「……居る、前に」
「え。でも、後ろに居るんじゃ」
「後ろにも(・・)居る」

 その瞬間、周囲が霧に包まれる。先程まで建物の隙間から見えた青々しい空は雲に覆われた様に真っ白になり、前も後ろも分からなくなる程の濃い霧に覆われ、ロベルティーネは咄嗟に隠し持っていたナイフを手に持って構えた。メルヴィンは彼女の後ろに隠れて、キョロキョロと怯えた様に辺りを見渡す。
 すると、石畳を駆ける音が周囲に響き渡る。その音は徐々に近づいており、ロベルティーネは敵が来るのを固唾を呑んで待つ。重心を低く落とし、いつでも動ける様な体勢で、その瞬間を待った。
 ──そして、その時は風を切る音と共に訪れる。

「!」

 彼女はメルヴィンを突き放して、受け身体勢を取った後に硬い石畳を転がる。一方、突き飛ばされた青年は「ぐえっ」と、蛙の鳴き声の様な声を発しながら、仰向けに倒れた。

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十二月三十一日(プロフ) - づみさん» 有難う御座います。読んで頂き光栄です。更新頑張りますので、今後共宜しくお願いします。 (2018年3月3日 2時) (レス) id: 70aae954fa (このIDを非表示/違反報告)
づみ(プロフ) - お話がとても好きです、更新たのしみにしています。頑張ってください〜 (2018年3月2日 16時) (レス) id: 688586594f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:十二月三十一日 | 作者ホームページ:   
作成日時:2018年1月18日 21時

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