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ドッ、ドサリ。ザクッ──ぐちゃりぐちゃり。どんなアーティスティックな言葉で表現しようとも、当たり障りのない擬音で例えようとも、この音の意味する事はこの場においては一択しかない。人にナイフを突き立てる音、人が崩れ落ちる音、更に人を刻む音、刻んだ後の音。どんな音でもストレートに状況を説明してくれて、こう言った物に耐性がない人間が聞けばすぐにでも卒倒してしまいそうな程の醜さと狂気が垣間見える。
 此処は知らない誰かの家。誰かが汗水流して働いたお金で作られた財産。そして、家族と暮らす為に築き上げた幸福の象徴でもあった。しかし、灯りも付いていない部屋の中に転がるのは人だった(・・・)何かの肉片と血溜まり、そして、その中に佇む一人の女。誰のかも分からない血で全身が汚れている彼女は、この家の持ち主だった男とその家族と思われる数人の骨を回収し、服のポケットから数少ないマッチ棒を取り出して火を付ける。ぼんやりと明るくなった部屋を見渡せば、そこら中に幸せな破片が転がり落ちていて、まるで彼女を責め立てる様に見えた。彼女はそれを気にする素振りもせずに、灯火を床に落とす。火は敷かれたラグに燃え移り、次第にその勢いを増して、大きな大きな炎となる。
 彼女は回収した骨を入れた麻袋と共に幸せな宝箱の様な家をさっさと後にした。家一つ燃やすには時間が掛かる。全てを消し去るには、それ相応の労力が必要となる。一階のリビングに大量に撒いた燃料材がどのぐらい功を奏するかは分からないが、殆どの証拠はこの猛火に焼かれて灰となるだろう。この手元にある骨を残して。

 狭く暗い裏路地を巧みに利用しながら、この骨はどうしようかと彼女は悩んでいると、──ガンッと後ろから物音が鳴る。
(──人、付けられたか!)
 彼女は咄嗟に真新しいナイフを懐から取り出し、振り返ってナイフごと腕を薙払ったが、ヒュンッと言う金属音を鳴らした刃は宙を切るだけ。一瞬避けられた事を想定したが、その想定はすぐに覆る事になった。
 青年。それも見窄らしい格好をした青年が、更に見窄らしい格好で路地に仰向けで倒れていたのだ。側には倒れたゴミ箱と散乱する生ゴミ。腐臭を放つ現場は非常に滑稽で、「無音の死神」とまで呼ばれた彼女でさえも惚けた顔で固まってしまう。片手に握られているナイフは淡い月明かりに照らされて鈍く光る。

「いっ、てて……」

 すると、さっきまで馬鹿みたいに転がっていた青年がむくりと起き上がった。

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十二月三十一日(プロフ) - づみさん» 有難う御座います。読んで頂き光栄です。更新頑張りますので、今後共宜しくお願いします。 (2018年3月3日 2時) (レス) id: 70aae954fa (このIDを非表示/違反報告)
づみ(プロフ) - お話がとても好きです、更新たのしみにしています。頑張ってください〜 (2018年3月2日 16時) (レス) id: 688586594f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:十二月三十一日 | 作者ホームページ:   
作成日時:2018年1月18日 21時

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