土方さんオチの土方さん好きのためだけの短編集

行ってらっしゃい。 ページ4

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『銀さん、真選組は少しばかり江戸を離れるみたいですね』

｢そうらしいな。｣







徳川茂々様が暗殺され、その次になったおかたが徳川喜々様。その人は、全くもって正反対の人だった。



しかも、その人は真選組を江戸の街から消すおつもりだろう。






『……よかった。彼らはまた、一段と強くなって帰ってくるのでしょうね』







私の彼らへの多大な恩を忘れる事はあってはならない。幾度も彼らは私達、民を護ってくれた。





そんな彼らがこの街から居なくなってしまうのはとてつもなく寂しい…だけどその決断は、私達民のことも、この国の事も考えてのものだろう。






｢いーの？Aちゃんは、土方(あいつ)に何か言っとかなくて。｣








銀さんのその言葉に少し、心が揺れてしまうが……私は彼に何かを言う資格などない。


きっと、彼だって私に何も言わず行ってしまうだろう。







『はい。彼はきっと、何も言わずに行ってしまうような人だから……。それに一生の別れじゃないですからね。』







そう言うと、銀さんはどこか不満そうな顔をして｢ふーん｣と言った。






『それじゃあ、私は帰りますね。銀さんはここで彼を待っているんでしょう？』

｢……まーな。じゃ、気をつけて帰れよ〜｣






大好きな彼だからこそ、私は何も言いたくないんです。







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今日はとうとう真選組(かれら)が江戸を発つ日だ。やはり、あの人は来なかったけど、きっと無事にまた戻って来てくれる。


一時の別れだ。








ピンポーン



『はあーい』


こんな時に誰だろうと、少し不安になりながらも戸を開けると＿＿………







｢よぉ｣

『ひじ、かたさん………？』





いつものタバコをくわえてその人は来た。





『どうしたんですか……？』






そう聞くと、彼は





｢……必ずお前の元に戻る。少しの間だけだから、待っていてほしい。もっと強くなって帰ってくる。｣






“帰ってくる”その言葉だけで、私には充分すぎる。
貴方の帰りなんて、何年でも待てますよ。






『………ｯ行ってらっしゃい！！』

｢……行ってくる｣





笑って見送るのが、女の務め。


ずっと、私は貴方の帰りを待っています。









END

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