第41話 今日のご予定は? ページ42
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「こんな小さい生き物の何が怖いの? 」
人差し指に先ほどのカエルを乗せ、神威さんは眉をひそめる。その光景に信じられない…と口には出さず目を見開けば、神威さんは意地の悪い顔をして、その指先を私に近づける。
思わず声を上げて逃げる私の姿がおかしかったのか、神威さんはケラケラと笑う。
ひどい人だ……面白がる彼を恨めしげに見れば、
はいはいと茶番をやめて、カエルを逃がした。
『布団もありがとうございます』
神威さんは私が玄関に行くよりも早くベランダから飛び降り、瞬く間に布団を抱えて戻ってきた。本当に私と同じ身体のつくりなのかな……
上にかける薄めの毛布だった為、それほど汚れていない。少しついた埃と土を払い、今度こそしっかり手すりに固定する。
「仕事は」
『今日は夜だけです』
「そう。じゃあせっかくだから行こうか」
『行くって……? 』
さも当たり前に言うものだから、約束してたっけ? と一瞬錯覚をする。ふいに神威さんの腕が伸びてきて、私の寝癖がついた髪を整えるように撫でる。寝癖がついた…
『‼』
「Aはそんな姿も男に晒すのかい? 大胆だね」
なんて失態。寝起きの姿をずっと晒していたなんて。寝癖がついた髪に、寝る時用のパジャマ。幼い頃、女の裏側を見せるなと姉様たちに叩き込まれた私が聞いて呆れてしまう。神威さんに見られたことが、なぜか余計に恥ずかしい。自分の油断した素の部分を見られてしまった錯覚に陥る。
そんな思いにも気づかず、神威さんは呑気に手すりに腰かけて、足を組んで座ってる。じっと観察する行為が急かされてるみたいで、動揺してしまう。
そもそも今日は部屋の掃除する予定だったのに…
とりあえず、外出用の着物を着て神威さんの前に姿を見せれば、はやいはやい〜さすが、と口先だけの褒め言葉を頂いた。
『神威さん。あの、行くってどこへ? 』
「この前約束したろ。団子屋」
『あのお店、今休業してますよ』
「それはどうかな? 」
数日前に月詠さんから聞いた話を思い出す。従業員が襲われて、休業していると。でも神威さんの口ぶりから何かを知ってるようだ。もしかして再開している?
「行こうか」
閉まっていた時の為に頭の中で吉原の他の茶屋、団子屋などを自分の知ってる限りで検索する。
神威さんはそんな私を見て、
「面白い顔」
と一言言い放った。
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月夜の光(プロフ) - ありちゃんさん» コメントありがとうございます!!そう言ってもらえてすごく嬉しいです(;o;)もっと上手に表現できるように頑張ります!ありがとうございます! (2021年2月28日 15時) (レス) id: e8dd5af318 (このIDを非表示/違反報告)
ありちゃん(プロフ) - 月夜の光さんの神威が好きすぎて他の作品見れなくなりそうです!!キュンキュンします(^^)更新楽しみにしてます (2021年2月27日 20時) (レス) id: 15fe9d02c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月夜の光 | 作成日時:2021年1月2日 22時