第33話 彼女らしい ページ34
新八side
叩くような雨もいつのまにか、優しげな音色に変わっていた。外に出れば傘を広げてる人とささない人とまばらだ。
「A大丈夫アルか」
『大丈夫だよ。今日はさくら屋休みだから、ココが終わったら真っ直ぐに帰るよ』
不安げな神楽ちゃんにAさんは笑顔で答える。月詠さんからあんな事件を聞いた後だ。一人暮らしのAさんを1人で夜道に歩かせたくない。それは神楽ちゃんや僕、もちろん銀さんも同じ気持ちだった。
「なんで、今日に限って猫探しの依頼入ってんだよ」
銀さんが恨めしそうに頭をかく。本来ならその依頼は先日終わっているはずだったのに、と僕はため息をついた。
「銀さんがこの前逃さなければ、今日はAさんを家まで護衛出来たんですよ」
「お前ら2人で行けばいいネ。私が店終わるまでA待ってるアル」
「依頼者が言ってたろ。
「それに今日こそ見つけなきゃ、あの依頼主にまた怒られるよ」
3人いるんだから、誰かがAさんの護衛をしても良いと思うが今回ばかりはそうもいかない。
一日中走り回って3人がかりでやっと見つけた猫だ。2人だけで見つけるのは至難の技だろう。
しかもその猫は女性しか触ることを許さないワガママ猫。女の子である神楽ちゃんがいなきゃ困るのだ。正直これ以上腕の傷を増やしたくない。
『猫、見つかるといいですね』
自分の心配よりも、猫の心配をするAさんを彼女らしいと思う。
初めて会った時もどこの誰とも知らない僕たちの力になってくれた。下手すれば反逆者として追われる身になるのに。変装する為に着物や髪を結ってくれたAさんを、幼い時に自分の世話をしてくれた姉上のようだと思ったことを覚えている。
しかし、名残惜しくAさんを見つめるのは神楽ちゃんでも僕でもない。銀さんだった。何度も大丈夫かとか、なんとかAさんが1人にならないような提案をかけるが、ことごとく心配しすぎだと彼女にやんわり断られている。
そこまでするのは、銀さんの世話焼きの性格からなのか、Aさんを特別に思ってのことなのかは本人しか分からない。が、おそらく後者だろう。
『また、来て下さいね』
ニコニコ手を振る彼女に、友人を置いてきぼりにするような複雑な感情になりながらも、また来ますと伝え別れる。
彼女の身に何もないことを祈りながら。
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月夜の光(プロフ) - ありちゃんさん» コメントありがとうございます!!そう言ってもらえてすごく嬉しいです(;o;)もっと上手に表現できるように頑張ります!ありがとうございます! (2021年2月28日 15時) (レス) id: e8dd5af318 (このIDを非表示/違反報告)
ありちゃん(プロフ) - 月夜の光さんの神威が好きすぎて他の作品見れなくなりそうです!!キュンキュンします(^^)更新楽しみにしてます (2021年2月27日 20時) (レス) id: 15fe9d02c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月夜の光 | 作成日時:2021年1月2日 22時