第25話 身勝手な約束 ページ26
・
「安心してよ。常日頃監視をするわけじゃない」
そこまで俺も暇じゃないからね、
なんて自分で提案しておいて、仕方なくと言った風。
私は何も頼んでないのに……
「ほら、帰るよ」
当たり前に言われ一瞬受け入れたが、すぐに気を取り直す。
仕事が途中なことを思い出した。
帰らないと意思表示すれば、
納得のいかない顔をして無理やり腕を引かれる。
「店のことなら、
楽器弾いてたアンタの友達に言っといたから、
安心しなよ」
Aは帰るってね、と初耳な情報で開いた口が塞がらない。
勝手にそんな約束した彼にも、
安易に承諾した雅にも、
それに気がつかなかった自分にも呆れてしまった。
『ダメです! 私、戻ります! 』
引かれた手を真逆の方向に力を入れれば、
無駄とばかりに腕が持っていかれる。
往生際が悪いなぁとため息をつかれ、
やり取りが面倒になったのか、
気づけば体を小脇に抱えられた。
お腹に彼の腕が回り、
くすぐったい感覚に身じろぎはしたものの、
次に襲ったのは恐怖心。
『お、下ろしてください! 』
「今? 」
『違います! 地面に、地上に! 』
視界から馴染み深い地面が遠ざかり、瓦ばかりの景色になる。
道ゆく人の頭が見えている。
誰か気付いてはくれないかと期待したが、
意外にも人は上を見上げないものだと虚しくなる。
「今日は俺の言うこと聞いた方がいいよ。A」
ジタバタしない私をみて観念したと思ったのか、
念を押すように言われる。
人間とは思えない脚力で建物を軽々と飛び越えれば、
見慣れたアパートが近づく。
大通りではなく、裏道に面している為、
街灯があまりなく薄暗い。
干しっぱなしの洗濯物が見える。
ココだろとばかりに、ベランダの手すり部分に足を乗せれば、
膝を折り小さな子供を扱うようにそっと降ろされる。
器用に手すりの丸みを帯びたところに乗っかり、
「店のところに、変な奴いた」
気づいた? と視線を向けられるが、
それに肯定は出来なかった。
・
482人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
月夜の光(プロフ) - ありちゃんさん» コメントありがとうございます!!そう言ってもらえてすごく嬉しいです(;o;)もっと上手に表現できるように頑張ります!ありがとうございます! (2021年2月28日 15時) (レス) id: e8dd5af318 (このIDを非表示/違反報告)
ありちゃん(プロフ) - 月夜の光さんの神威が好きすぎて他の作品見れなくなりそうです!!キュンキュンします(^^)更新楽しみにしてます (2021年2月27日 20時) (レス) id: 15fe9d02c8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:月夜の光 | 作成日時:2021年1月2日 22時