第15話 覚えてる? ページ16
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「俺のこと、覚えてる? 」
何も喋らない私に、次々と質問がふってくる。
青い瞳を開き、自分が見えてるのか確かめるように、
大袈裟に私の顔の前でおーい、と手を振る。
『お、覚えてます』
ようやく話した私に彼は満足げな表情を浮かべる。
「ねぇ、さっきの奴に見覚えある? 」
『な、ないです! 』
屋根の上を見上げて男が尋ねる。
見覚えもなにも、姿が見えなかった。
体格が良く、大柄だとは分かったが、
それ以外の情報を提供出来ない。
その答えを聞いてもさほど落胆はしてないよう。
ふぅん、と聞いた割には興味もなさげ。
『姫……いっ! 』
そうだ、そよ姫様を捜さなきゃ。
立ち上がろうとすると、右足に鈍い痛み。
足首から血が流れていた。
男は私の動作を一部始終無言で眺める。
「人間ってホントに脆いネ」
やっと喋ったかと思えば、
ため息混じりに呆れたように呟く。
全人類が私のように弱い訳ではないので、
勝手に残念がらないでほしい。
不貞腐れてると、また深く息をつき彼はうなだれる。
ピョンとちょうど頭のてっぺん、
流れに逆らった毛先がゆらりと揺れる。
「弱いのに、なんで助けようとするかな……」
独り言なのか、私に向けて言っているのか分からず、
何も言葉に出来ない。
『あの、』
「アンタの探してるヒメサマなら、
来る途中のゴミ袋の上でスヤスヤ寝てるよ」
遮るように言葉を被せられる。
笑っているかと思えば、今はあの笑顔が嘘のように
冷めた視線をぶつけられる。
ゴミ袋という単語で、
確かにこの近くにはゴミ捨て場があったな、
とぼんやり思い出す。
『ありがとう、ございました』
目の前の彼はチラリと私をみると、
自分の腕に巻いていた包帯をくるくると外す。
ほどき終わると、その包帯を血がダラダラと流れる
私の足首に巻きつけてきた。
急に触れられる彼の指先はヒヤリと冷たい。
驚いて少し足を動かすと、
「もっと血を出されたいのかい? 」
なんて恐ろしいことを笑顔で言ってきた。
と同時に掴まれてる足首に力が込められる。
『い、いいえ! 』
優しいのか、恐ろしい人なのかよく分からない。
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月夜の光(プロフ) - ありちゃんさん» コメントありがとうございます!!そう言ってもらえてすごく嬉しいです(;o;)もっと上手に表現できるように頑張ります!ありがとうございます! (2021年2月28日 15時) (レス) id: e8dd5af318 (このIDを非表示/違反報告)
ありちゃん(プロフ) - 月夜の光さんの神威が好きすぎて他の作品見れなくなりそうです!!キュンキュンします(^^)更新楽しみにしてます (2021年2月27日 20時) (レス) id: 15fe9d02c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月夜の光 | 作成日時:2021年1月2日 22時