82 ページ33
【師範side】
誰もない遊園地にひとりきり、小さな少女が泣きじゃくっていた 。
踵を返さず場をあとにした、自分には関係ない事だと。
そうそう、そこでじっとパパのお迎えを待ってなよ。
「どこだろう」と言いながらその子は立ち去った。
昔、知らない場所で落し物し泣き顔晒し手を引かれ、白皙の魔法使いに助けられたっけな。
あの人のようであれば…。
時計は私の心を見透かすように静かに笑った。
散開星団とはしゃぐ至高のフェアリーランド。
昔日に見向きもせず…。
ヒビの入った硝子の靴は遠ざかる。
まだ奇譚の事始めのことだった。
誰もない遊具の前で躓いて、草臥れたお人形を拾った。
なぜだか手放せなかったんだ。
お荷物になるだけだろうに。
奇妙な行動に自分でも苦く笑いたいよ。
けれどそれも出来ぬ程退路を断たれてた。
そして再び歪み始める空、望遠鏡を捨て去って、ぼろぼろの人形だけ抱え走り出してた。
早く助けて救世主、幼い声がそれに被る。
時計は針進める。
惑星を打ち落とす非常のネバーランド。
罵倒にも背中見せず…。
散らばった鏡見て指先凍る。
今奇譚の中盤戦のこと。
昔、知らない場所で落し物し泣き顔晒し手を引かれ、白皙の魔法使いに助けられたっけな。
あの人は此処に来ない、誰だったか思い出したんだ。
今君を助けに行くよ。
だから待ってて。
伸びた影を踏む最後のワンダーランド。
呼吸など意識もせず…。
あなたの落としたものはこれですかと私は尋ねる。
「ああ、もう何も要りません。」
と、安心したのかその場に膝から崩れ落ちる少女。
私はそれを優しく抱き上げる。
12時の鐘響く最後のワンダーランド。
懐かしい重さが戻ってくるような感覚に襲われた。
そして私より歳上であろう女性に告げられる。
「全く、君には敵わないな」と。
ねぇ、奇譚の結び聞かせてよ、神様。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 71人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
きなこもち(プロフ) - ひぃさん» ありがとうございます！更新頑張りますヽ(´▽｀)/ (2021年5月29日 6時) (
レス) id: 9b397e807b (このIDを非表示/違反報告)
ひぃ(プロフ) - 出てくるメンバーが可愛いくて、でも真面目？な雰囲気の話もあって、めっちゃ面白いです…！続きの更新が楽しみです！ (2021年5月28日 18時) (レス) id: 21a845e247 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：きなこもち | 作成日時：2021年5月4日 10時
