家族の時間 ページ40
《月を襲った怪物が教師として都内私立中学校に潜伏！生徒達を洗脳か！？》
テレビにはどこか大袈裟な文字が浮かんでいた。
朝の日課である筋トレを終えた彼はいつもの穏やかな表情を浮かべてパソコンを片手に珈琲を飲んでいた。
「おはよう學峯さん」
「あぁ。おはよう」
レースのかかったカーテンを開くと、小窓から見える小さな椚ヶ丘中学校の旧校舎が、オレンジ色の大きなレーザーで出来たドームに包まれている。
「まぁ、とても大掛かりねぇ。こんなに事を大きくして大丈夫なのかしら」
「私の指示じゃない。政府が私に無断で決行したことだよ。全く...随分と派手にやってくれたな」
「わかっているわ。貴方はこんな安直な事はしないもの」
彼は表に出さないようにしているが、ひどく怒っているようだった。
しばらく安易に家から出ない方が良いわ。食材はしばらくは足りるだろうし。
洗濯物はどうしようかしら。布団はなるべくお日様に当てて干したいのだけれど。
頭の中では、ずっとそんな事をぐるぐると考えていた。
「朝食、何が良い？」
「君に任せるよ」
「えぇ、わかったわ。珈琲を飲み終わったら、また声をかけてね」
カーテンを閉じ、朝食の支度を始めた。
全てのおかずを同時に作り終えられるように計算しながら準備を進めていく。
卵をとき、フライパンに流すと、ふんわりと卵の優しい香りが舞い上がる。
黄色い円になった卵を見て、どこか月のようだと思った。
「Aさん」
「どうしたの。學峯さん」
「すまないが、今日は私の分の弁当も作ってもらいたい。構わないかな」
珍しい事だった。彼はいつも昼食は学内関係者かプライベートでのビジネスの関係者と食べることが多く、最後にお弁当を持って行ったのはまだ私塾を経営していた頃だ。
「...勿論よ。腕によりをかけて作るわ」
机の上の携帯からは、バイブ音が鳴り止まない。
それでも彼は気に止めていないようだった。
リビングのテレビからは、なんの事情も知らないであろう一般人が、インタビューで各々の意見を述べている。
その中には、彼を非難する言葉も少なくなかった。
「學峯さん」
だから、テレビを消した。
途端にリビングには卵の焼ける音に満たされる。
「あの先生を雇った事は、誰がなんと言おうと間違っていなかったわ。私が保証する」
「事情を知らない人達が貴方に心無い言葉をかけても、気にしてはだめよ」
「あの方と出会えて、貴方も私も、きっとE組の生徒達も、救われたはずだもの」
彼は「わかっているよ」と小さく笑い、珈琲カップを空にした。
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ミルメーク(プロフ) - 長い間お疲れ様でした！もし良ければ浅野親子関係で新しいストーリー作って欲しいです！ (3月21日 20時) (
レス) id: b3b06100e3 (このIDを非表示/違反報告)
hal - 非常に面白かったです！時間を忘れて一気に読みました。原作のイメージそのもので驚き、公式から浅野家スピンオフとして出せる作品だと感じました。私も学秀君が正気を保っていられたのも、浅野家が家族として何とか機能していたのも奥さんの存在が大きいと思っています (2023年3月13日 1時) (レス) id: 96f1185981 (このIDを非表示/違反報告)
キャラメルコーン(プロフ) - 奥様が泣いたてしまったシーンが私の中で凄く感動して泣きました、これからも更新する予定でしたら更新していただけると嬉しいです！ (2022年9月2日 0時) (レス) id: bee3de3e8f (このIDを非表示/違反報告)
おむれつ(プロフ) - おもちゃ箱さん» コメントありがとうございます。キャラの口調等は特に気をつけて書いているのでそう言って頂けると嬉しいです！ありがとうございます。更新これからも頑張っていきます。よろしくお願いします。 (2022年2月24日 21時) (レス) id: b911301b3c (このIDを非表示/違反報告)
おもちゃ箱(プロフ) - キャラの特徴がすごくつかめていて、読んでいて違和感がないです！！お話も本当に面白いです！更新待ってます！ (2022年2月23日 21時) (レス) @page17 id: c78fba56e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おむれつ | 作者ホームページ：http://mokyumokyuuu
作成日時：2022年1月11日 19時
