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「嬉しいお誘いですが、この後は明日の小テストの作成をしなければなりません」
「まぁ、そうですか。ではまたの機会にしましょうか」
たった一度話しただけだというのに、二人の間の空気感はまるで仲の良い隣人のようだった。
庭に出た私の存在に気がつくと、殺せんせーはゆっくりと巨体をかがめて会釈をする。
「これはどうも殺せんせー。どうかしましたか」
「インドに行った帰りに立ち寄ってくださったんですって。本当に面白いお方よね」
彼女は興味深そうに殺せんせーの身体を眺めている。どうやら彼女は“殺せんせー”という生き物の生態に興味があるようだ。
「殺せんせー。貴方は擬態の精度をもう少し研究なさった方がいい。家の中で浅野君が警戒していますよ」
「にゅやッ！このどこからどう見ても完璧な擬態を見破るとは！流石は理事長のご子息ですねぇ」
正直ギリギリ人間に見えるか疑わしいレベルの擬態であったが、本人はいたって真剣なようだった。
妻に視線を送ると、堪えるように控えめに、華奢な肩が震えていた。どうやら彼女は相当にこの未知の教師を気に入っているらしい。
「それでは、理事長先生にもご挨拶出来たことですし、私はそろそろ失礼します」
「えぇ。また明日」
殺せんせーは再びぺこりと頭を下げると、触手をぬらりぬらりと、あたかも人間の手足のように動かしながら、我が家の門を出ていった。
ほんの一瞬の、瞬きの間に、その巨体は空へ飛び立ち姿を消した。
「Aさん。私が言うのも難だが、君はとても心臓が強いな。こういった光景を見ても少しも動じないとは」
「あははっ、私だって相手が鋭い爪や牙を持った野蛮な怪獣なら多少は驚くかもしれないわよ」
「けれど殺せんせーは違うわ。あの方はどこか昔の貴方に似ているもの」
エプロンの入ったカゴを抱え、彼女は穏やかに、ゆったりと目を細めた。
「私と彼はそんなに似ているかい」
「えぇ。とってもよく似ているわよ。自覚はないの？」
「あったつもりだが…まだ受け入れきれてないと言った方が正しいかもしれないな」
私もは自らの角張った手に視線を送る。
妻は何も容姿が似ていると言いたいわけではないだろうが、あの丸い巨大なタコ型教師と似ている言われると、どうもむず痒い。
「随分と冷え込んできたな。もう冬か」
「そうねぇ。そろそろ毛布も出した方がいいかしらね」
空が随分と高くなった。
冬雲の隙間からは薄い三日月が顔をのぞかせる。
今年はどうにも、時が経つのが早い。
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ミルメーク(プロフ) - 長い間お疲れ様でした！もし良ければ浅野親子関係で新しいストーリー作って欲しいです！ (3月21日 20時) (
レス) id: b3b06100e3 (このIDを非表示/違反報告)
hal - 非常に面白かったです！時間を忘れて一気に読みました。原作のイメージそのもので驚き、公式から浅野家スピンオフとして出せる作品だと感じました。私も学秀君が正気を保っていられたのも、浅野家が家族として何とか機能していたのも奥さんの存在が大きいと思っています (2023年3月13日 1時) (レス) id: 96f1185981 (このIDを非表示/違反報告)
キャラメルコーン(プロフ) - 奥様が泣いたてしまったシーンが私の中で凄く感動して泣きました、これからも更新する予定でしたら更新していただけると嬉しいです！ (2022年9月2日 0時) (レス) id: bee3de3e8f (このIDを非表示/違反報告)
おむれつ(プロフ) - おもちゃ箱さん» コメントありがとうございます。キャラの口調等は特に気をつけて書いているのでそう言って頂けると嬉しいです！ありがとうございます。更新これからも頑張っていきます。よろしくお願いします。 (2022年2月24日 21時) (レス) id: b911301b3c (このIDを非表示/違反報告)
おもちゃ箱(プロフ) - キャラの特徴がすごくつかめていて、読んでいて違和感がないです！！お話も本当に面白いです！更新待ってます！ (2022年2月23日 21時) (レス) @page17 id: c78fba56e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おむれつ | 作者ホームページ：http://mokyumokyuuu
作成日時：2022年1月11日 19時
