夫の時間 ページ28
宝石や装飾品よりも、一輪の花を喜ぶ人だった。
彼女にとっては生まれも育ちも、資産も、容姿も、目の前の相手を判断する材料にはならない。
格式の高い家系に生まれながらも、彼女は決して驕らず人を見下すことはしない。
欠点だけで相手を決めつけず、その人の人柄を見つめて、誰に対しても敬意を払い同等の目線で接する。
そしてそれは私に対しても同じ
そんな彼女の隣は、居心地が良かった。
『遠くで救急車やパトカーのサイレンが鳴ると、貴女の身を案じてしまうようになった』
『雪が降ると、貴女が凍えているのでは』
『雨が降ると、貴女が濡れているのでは』
『そんな事ばかり考えるようになってしまった』
楓の木の下にあるベンチに腰掛け、目の前を流れる大きな川を眺めた。
秋の夕陽が水面に反射し、輝きを放っている。
彼女は片手で風になびく髪を押さえながら、こちらを見つめていた。
当時は彼女も私も若かった。
『終いには何も無い平穏な日でさえ、貴女が何をしているのか考えてしまう。笑えてしまうでしょう』
私も彼女を見つめた。
髪の毛が陽に照らされ、金色に輝いて見えた。
『つまり、Aさん』
『私は_____ 』
_______
「おや、貴方からいらしてくださるとは」
理事会を終えて理事長室へ戻ると、何かしらの甘味と思しき箱を抱えた殺せんせーが立っていた。
「丁度お伺いしようと思っていた所です」
「先日は随分と妻が世話になったようで。とても感謝していましたよ」
私も同様に、今朝方妻から持たされたバームクーヘンの入った箱を取り出す。
「とんでもありません。こちらこそ貴重な時間を過ごさせていただきました」
椅子を用意すると、殺せんせーは緩い笑顔を浮かべて深く腰掛ける。
箱を開けるなり、瞬時に理事長室には砂糖の甘い香りが漂い始めた。
「生憎今は珈琲しかありませんが、構いませんか」
「にゅやッ！？理事長先生の手を煩わせる訳にはいきません！今すぐブラジルへ飛んで新鮮なコーヒー豆を採取して…」
「お気になさらず。妻の件のお礼という事で」
理事会へ向かう前に淹れておいた珈琲を二つのカップに注ぎ、机の上に置いた。
換気のために三センチほど窓を開け、私も自身の椅子へと腰を下ろす。
「妻とは何の話を？」
「ヌルフフフフ。素敵な惚気話を聞かせていただきましたよ」
「惚気話？ははは、彼女らしくない」
珈琲の煙がゆらりと立ち上っていく。
「…よろしければ、私の話も一つ聞いていただけませんか？殺せんせー」
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ミルメーク(プロフ) - 長い間お疲れ様でした！もし良ければ浅野親子関係で新しいストーリー作って欲しいです！ (3月21日 20時) (
レス) id: b3b06100e3 (このIDを非表示/違反報告)
hal - 非常に面白かったです！時間を忘れて一気に読みました。原作のイメージそのもので驚き、公式から浅野家スピンオフとして出せる作品だと感じました。私も学秀君が正気を保っていられたのも、浅野家が家族として何とか機能していたのも奥さんの存在が大きいと思っています (2023年3月13日 1時) (レス) id: 96f1185981 (このIDを非表示/違反報告)
キャラメルコーン(プロフ) - 奥様が泣いたてしまったシーンが私の中で凄く感動して泣きました、これからも更新する予定でしたら更新していただけると嬉しいです！ (2022年9月2日 0時) (レス) id: bee3de3e8f (このIDを非表示/違反報告)
おむれつ(プロフ) - おもちゃ箱さん» コメントありがとうございます。キャラの口調等は特に気をつけて書いているのでそう言って頂けると嬉しいです！ありがとうございます。更新これからも頑張っていきます。よろしくお願いします。 (2022年2月24日 21時) (レス) id: b911301b3c (このIDを非表示/違反報告)
おもちゃ箱(プロフ) - キャラの特徴がすごくつかめていて、読んでいて違和感がないです！！お話も本当に面白いです！更新待ってます！ (2022年2月23日 21時) (レス) @page17 id: c78fba56e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おむれつ | 作者ホームページ：http://mokyumokyuuu
作成日時：2022年1月11日 19時
