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僕の家が歪ながらも辛うじて家庭という形を保ってこられたのは、母がいてこそだっただろう。
「父さんは僕を支配の対象としか見ていませんよ」
物心ついた時から、僕と父の関係は険悪そのもので、二人の間の雰囲気は常に重苦しいものだった。
だが、母はそれをお構い無しに、いつも朗らかな笑顔を浮かべて取り留めのない雑談を持ちかける。
僕と父を繋ぐ唯一の存在だった。
「そんな事を言わないであげて。父さんは父さんなりに貴方のことちゃんと想ってるのよ」
客間用の花瓶に花を活けながら、母は答えた。
母は父と同様に化け物であった
完璧超人である浅野學峯の妻の名に恥じぬ程、何をやらせても非の打ち所のない人である。
第一に、母は息子の僕から見ても美しく、老いを知らない人だった。
十年前からほとんど容姿は変わっておらず、かと言って妙な若作りをしている訳でもなく、年相応の美しさを身につけていた。
しかし、ただ隣で美しく微笑んでいれば務まるほど、浅野學峯の妻という立場は易しくはない。
「こんな感じかしらね。お客様、喜んでいただけるといいのだけど」
何の絡みかは不明だが、父は大規模な会食に顔を出す機会が多くあり、その配偶者枠として時折母も同伴していた。
僕も幾度か出席したが、母は政界や芸能界の大御所と談笑し、また海外の著名人ともその国に応じた言語で完璧に対応してみせた。
また、楽器や茶道、華道など様々な教養を嗜んでおり、家事全般も、家政婦など必要ない程完璧にこなしていた。
だが、そのどれもこれも母にとっては差程価値のないものであった。
いつだって母の自己評価は“普通”であり、一度たりともその知識や自身の器量をひけらかしている姿を見たことがない。
それどころか、度々A組の母親達に自身は不出来な妻だと謙遜をする姿を見かける事さえあった。
要は、自己評価が低いのだ。
「良いと思いますよ」
「そう、ならよかったわ。学秀、少し準備を手伝ってくれないかしら」
「わかりました」
記憶の中の母はよく笑っていた。
現に今も、おっとりとした笑顔を浮かべている。
だが、僕は知っていた。
母は無理をして笑っていること。
穏やかな笑顔は苦しみを隠すためであること。
そしてそれを、僕にだけは絶対に知られたくないと強く思っていること。
「それは僕が持ちますよ。重いでしょう」
「これくらい持てるわ。大丈夫よ」
「いいから」
だから僕も、ただ平然と日常を続けていた。
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ミルメーク(プロフ) - 長い間お疲れ様でした！もし良ければ浅野親子関係で新しいストーリー作って欲しいです！ (3月21日 20時) (
レス) id: b3b06100e3 (このIDを非表示/違反報告)
hal - 非常に面白かったです！時間を忘れて一気に読みました。原作のイメージそのもので驚き、公式から浅野家スピンオフとして出せる作品だと感じました。私も学秀君が正気を保っていられたのも、浅野家が家族として何とか機能していたのも奥さんの存在が大きいと思っています (2023年3月13日 1時) (レス) id: 96f1185981 (このIDを非表示/違反報告)
キャラメルコーン(プロフ) - 奥様が泣いたてしまったシーンが私の中で凄く感動して泣きました、これからも更新する予定でしたら更新していただけると嬉しいです！ (2022年9月2日 0時) (レス) id: bee3de3e8f (このIDを非表示/違反報告)
おむれつ(プロフ) - おもちゃ箱さん» コメントありがとうございます。キャラの口調等は特に気をつけて書いているのでそう言って頂けると嬉しいです！ありがとうございます。更新これからも頑張っていきます。よろしくお願いします。 (2022年2月24日 21時) (レス) id: b911301b3c (このIDを非表示/違反報告)
おもちゃ箱(プロフ) - キャラの特徴がすごくつかめていて、読んでいて違和感がないです！！お話も本当に面白いです！更新待ってます！ (2022年2月23日 21時) (レス) @page17 id: c78fba56e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おむれつ | 作者ホームページ：http://mokyumokyuuu
作成日時：2022年1月11日 19時
