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『池田君と約束事をしたんだ』
彼は笑顔で、ワイングラスを片手にそう言った。
『一日に一度、私をいつでも攻撃して構わない』
『攻撃を当てれたら、その日の授業はサボっていい』
アロマキャンドルによる暖かい光と、ラベンダーの香りが漂っている。
『大丈夫なの？そんな約束して』
『小学生の攻撃なんて、可愛いものだよ』
彼は生徒達が楽しめる教育を、誰より自分自身が楽しんで行っていた。
事実生徒達との話をしている時は、本当に幸せそうで、それを聞いている私もまた幸せだった。
______
お墓は既に掃除がされており、数本の花が手向けられ、香典に立った線香からは煙が上っている。
私達の前にも何人もの人が彼の死を悼み、ここを訪れたのだろう。
「久しぶりだね。池田君」
そう呟いた夫の表情は、逆光によりよく見えなかった。
私と夫も菊の花を手向けると、線香を焚いて手を合わせる。
目を閉じれば、手足の熱が奪われ、深い水に沈んでいくような感覚に陥った。
『もしかして、浅野先生の奥さん？』
夫の第一期生である三人は、一度だけ会ったことがあった。
夫が忘れたお弁当を届けに行った時、彼と三人の生徒は校庭でバスケットボールをしていたのだ。
『初めまして、みんなのお話はよく聞いてるわ』
そう言って微笑むと、三人は目を輝かせ、私と彼を交互に見つめる。
『すげぇ美人だ！なぁなぁ、浅野先生のどこを好きになったの？プロポーズの言葉は？』
『や、やめなよ池田君』
『あ、それ私も気になるかも！』
『森さんまで…』
三人は私のもとへ駆け寄ると、次々と無邪気な質問を投げかけた。
嬉しさもありつつ戸惑っていると、彼が呆れ顔でボールを抱えてこちらへ歩いてきた。
『こら、困っているじゃないか』
『先生は奥さんのどこを好きになったのー？』
『次のテストで百点を取れたら教えてあげるよ』
ブーイングを浴びながらも、彼は穏やかに笑う。
『わざわざありがとう。Aさん』
そして私に対しても、ほんのりと柔らかい笑顔を見せた。
『いいのよ。頑張ってね
『わ、先生の奥さん赤くなってる！』
『ほんとだ！』
『あははっ、赤くなんてなってないわよ』
生徒達に冷やかされながら、山を下った。
私はその日“先生”である彼を初めて見た。
ほんの一時の出来事だったが、今でもはっきりと記憶に残っている。
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ミルメーク(プロフ) - 長い間お疲れ様でした！もし良ければ浅野親子関係で新しいストーリー作って欲しいです！ (3月21日 20時) (
レス) id: b3b06100e3 (このIDを非表示/違反報告)
hal - 非常に面白かったです！時間を忘れて一気に読みました。原作のイメージそのもので驚き、公式から浅野家スピンオフとして出せる作品だと感じました。私も学秀君が正気を保っていられたのも、浅野家が家族として何とか機能していたのも奥さんの存在が大きいと思っています (2023年3月13日 1時) (レス) id: 96f1185981 (このIDを非表示/違反報告)
キャラメルコーン(プロフ) - 奥様が泣いたてしまったシーンが私の中で凄く感動して泣きました、これからも更新する予定でしたら更新していただけると嬉しいです！ (2022年9月2日 0時) (レス) id: bee3de3e8f (このIDを非表示/違反報告)
おむれつ(プロフ) - おもちゃ箱さん» コメントありがとうございます。キャラの口調等は特に気をつけて書いているのでそう言って頂けると嬉しいです！ありがとうございます。更新これからも頑張っていきます。よろしくお願いします。 (2022年2月24日 21時) (レス) id: b911301b3c (このIDを非表示/違反報告)
おもちゃ箱(プロフ) - キャラの特徴がすごくつかめていて、読んでいて違和感がないです！！お話も本当に面白いです！更新待ってます！ (2022年2月23日 21時) (レス) @page17 id: c78fba56e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おむれつ | 作者ホームページ：http://mokyumokyuuu
作成日時：2022年1月11日 19時
