3話 ページ3
手首が折れそうなほど力強く掴まれ抵抗なんて出来るはずもない。「痛いやめて離して」と泣き叫びたいのに声が上手く出せない。
そんな様子にピエロ男はご機嫌そうに少女を引きずりながら階段を降りていく。
「何も知らず大事に育てられてきたんだろうな。けどなぁ、無知っていうのも罪だと思わねぇーかぁ?お嬢ちゃんよォ」
どさりと投げ捨てられれば、ヌチャとした感覚に視界に入ったのは撃ち殺された両親の死体。
「テメェの親は俺たちの金を奪って逃げた。その金でこんな場所でそれなりの裕福な生活してたんだよ。お前みたいな餓鬼まで作って。笑えるよなぁ。逃げられると思ったんだか…"梵天"からよぉ」
ペラペラと喋る男の言葉を足りない脳をフルにして少女は「両親はお金絡みで殺された」「梵天というところに」この二つを理解した。
カチャリと男はポケットからピストルを抜いて少女に焦点を合わせる。
「これで一発で決めてやる。俺は優しいピエロだからなぁ?ガキには慈悲ぐらい与えてやらねぇーと」
そのピストルをただ見つめた。恐怖で固まったわけではない。何故か見覚えがあったのだ。
銃社会ではない日本で幼い少女が見覚えがあるなんてことありえないはずだ。ましてやこんな田舎に住んでいたというのに。
「じゃあな、来世で良い親に期待しろ」
男が引き金に指をかける数秒で脳裏に流れる走馬灯。その中に、父が「護身用」だと胸内ポケットに銃を入れる姿があった。
咄嗟の判断だった。隣で倒れている父の胸元に手をつっこんで冷たい鉄の塊を手に取って真似るように引き金を引いた。
パンッ!!!と弾ける音と火薬の匂いと共にピエロの仮面に銃弾が貫いた。
倒れていく男と共に勢い余って後ろに倒れる少女。小さな体には負担が大きくしばらく動けないでいた。
息を整えてなんとか痛む体を起き上がらせたあと少女は、そっと男の方を見た。
全く動かない。
「…ッどう…にかしない…とッ…」
真っ先に浮かんだのはこのピエロ男を家から出すことだった。顔を覗き込めば仮面は横半分に割れて口元だけが露わになっていた。口の両端に生々しい傷跡。
「ひっ…」
すぐに目を逸らして長い足を掴んでは引き摺りやっとの思いで家の外から出したその時だった。
ピクリと動いた腕がこちらに勢いよく伸びてきた。
「ッ!?」
反射的に避けた後、男から逃げるようにその場から駆け出した。
「やってくれたな゛ァ!!クソ餓鬼がァァ゛!!!」
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Omiso(プロフ) - 十六夜夏希さん» コメントありがとうございます!好きだと言っていただけてとても嬉しく思います!また、書き終わってしばらく経った今でもこうしてコメントを頂けること幸せです!本当に最後まで読んで頂きありがとうございました! (2022年4月30日 14時) (レス) @page38 id: 6bf568ad42 (このIDを非表示/違反報告)
十六夜夏希(プロフ) - マイキーが春千夜を見放す(?)のって珍しいですね!言葉では表せないくらい好きです。お疲れ様でした!! (2022年4月30日 13時) (レス) @page39 id: cc6ab814ba (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - ゆゑるさん» コメントありがとうございます!わわっ!たくさん褒めていただいてとても嬉しいです😊何より貴方様を楽しませられたことが作者にとって一番の幸せです😭本当に最後まで読んでいただきありがとうございました! (2022年4月12日 8時) (レス) id: 6bf568ad42 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゑる(プロフ) - うわぁぁぁ!!今読み終わったんですけど、最高ですっ...!作者様の表現の仕方からもう素敵でした😭めちゃくちゃ面白かったです!!!!! (2022年4月12日 1時) (レス) @page39 id: 1d05848943 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - yumuiさん» コメントありがとうございます!隠れ主人公!確かにそういった捉え方もありますね…貴方様の発想に驚かされました。作り手としてしっくりときたお言葉をいただいて嬉しく思います。最後まで読んでいただきありがとうございました! (2022年3月7日 16時) (レス) id: 6bf568ad42 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Omiso | 作成日時:2021年10月16日 17時