気づいた時にはもう遅いから【呪術廻戦】

8話 ページ8

夏油サイド


「とりあえず積極的になること。分かったかい？」

「わ、分かりました…ありがとうございました！」


教室から出て行く彼女を見届け隣の席に目を向ける。そう、Aちゃんの席。


「…」


立ち上がりその席に座って伏せ寝する。荒くなる息と高鳴る鼓動に震える体。〜ッほっっんと可愛いッ！！今すぐに手を出して食べちゃいたいぐらい。


「Aちゃん…ッ…ハァーーー…好き」


ずっと、ずっと、好きなんだよ。悟に対して必死に恋心を隠す健気な姿に気づいた日から。

見ているだけでもどかしくて、切なくて、可愛いくて仕方が無くなってきて、気付けば君のその想いを私に向けて欲しくなっていた。


「悟を好きになる悪趣味なところもお馬鹿ちゃんで可愛いすぎ…ッ…」


彼女の机に手を滑らせる。日頃ここでお勉強をして、たまに伏せ寝しているのかな。今この席に座れているのは私だけの特権だね。

しかし、ドタドタ聞こえる足音にパッと顔を上げると乱雑に扉が開く音。


「A！任務終わったから遊べ…って、いねぇーし。って傑？」

「悟か。Aちゃんなら部屋に帰ったよ」

「んだよ、タイミング悪。てかそこAの席だよな？なんでお前が座ってんの」

「それはさっきまでAちゃんと話してたから」

「…へー、何話してたわけ？」


ドカリと隣の席に座る悟。危ない、Aちゃんの席で興奮してたなんて言えない。


「好みのタイプについてだよ」

「まじ？Aがそんな話するわけ？男っけないくせになぁ」


ケラケラと笑うが君が彼女の意中の相手…なんて思いもしないか。


「じゃあ悟はどういう人がタイプなんだい？」

「俺？まぁ、大人しい奴かな。グイグイくる積極的な奴は嫌いだし」

「ハハッ、そう思ったよ」

「さすが、分かってるな」


君の好みなんてお見通しさ。そして、彼女をその真逆に仕向けることも。


「だからAはグイグイこねぇーしいいよなぁ。ずっと今のまま最高のおもちゃでいて欲しいわ」


そう言う割には悟がいう今のまでのおもちゃはヤリ捨てだったのに。Aちゃんに限ってはわざわざ自分から足を運ぶほど好きなのくせにね。

でも君は素直じゃなくておもちゃという言葉で片付けてしまう。そのねじ曲がった性格が恋へ発展しない。

だから利用しやすい。この立場を、この関係を使って
二人を引き裂き、ぶち壊すことも可能なんだよ？

そんなことも知らずに呑気に喋り続ける親友にニコリと笑みを浮かべ嗤った。

9話→←7話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す