40話 ページ40
貴方サイド
一緒に寝ていたはずの夏油先輩は朝には既にいなかった。きっと任務に行ったんだろう。
そんな先輩に最近感じる違和感。常に余裕がない気がするのだ。切羽詰まった顔もよくするようになった。
なんでだろう と考えるものの本人に追求しようとしない私は薄情だろうか。仮にも恋人だというのに。
でも、所詮私が夏油先輩と付き合ったのは失恋の寂しさを埋める為だった。完全に彼に心が傾いたわけではない。
結局、この半年間そんな生半可な気持ちで夏油先輩と付き合って、寂しさを埋めるため利用し続けている。
いつかそのツケが返ってくるとすればそれはいつになるだろうか。もしかしたら今日…なんて。
でも夏油先輩が私の中途半端な想いに気付かない限り大丈夫だろう…と考える私はきっと自己中で最低だ。
ハァと溜息をついては自己嫌悪に浸る。だがすぐに自己嫌悪から解放されて、目の前の人物に頭がいっぱいになった。
泊まっていた夏油先輩の部屋から出れば、今まで避け続けていた五条先輩とばったり鉢合わせたからだ。
しばらく互い見つめ合うが途端に居心地が悪くなり、「失礼します」と駆け足で横を通り過ぎる。だけど、
「なぁ」
久しぶりの呼びかけにその場で足を止めてしまう。だが、散々なフり方をされた相手という認識に五条先輩の方を見ることはせずただ次の言葉を待った。
すると、しばらくしてポツリと
「最近、傑の様子がおかしい。お前…なんか知ってるか?」
「…いえ、なにも」
「そっか」
止まる会話。何とも言えない気まずさに今度こそその場を去ろうとするとパシリと掴まれる手首。振り向けば青い瞳が真っ直ぐに私を捉えていた。
「気を付けろよ」
気を付けろとは一体何に?と思っているとパッと離される手首。そして、私の首元をチラリと見ては少し悲しそうに眉を下げた後、背を向けて行ってしまった。
首元に手を当てる。ここは昨日夏油先輩に痕つけられた場所。
なんで今更あんな顔するんだろ。意味が分からない。分かりたくもない…ッ…
チクリと胸の奥が痛くなって、忘れるように駆け出しては誰もいない屋上へと向かう。
扉を開ければ、蒸し暑い空気に包まれて照りつける太陽が鬱陶しく雲一つない青空が相変わらず憎たらしかった。
だけどこの場所が一番落ち着いてふと空を仰ぐ。すると、大きな影が覆い空に浮かぶものに目を見開いた。
「え…なんで…ッ…?」
それを視認した瞬間、校内にけたたましい警告音が鳴り響いた。
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Omiso(プロフ) - 緑の白猫さん» 前作でも今作でもコメントありがとうございます!ドロッドロという素敵な褒め言葉、最高に嬉しいです!心情は特に意識しているのでそう言って頂けて光栄に思います!次回作を出せれた時はぜひ応援よろしくお願いします!最後まで読んで下さりありがとうございました! (2021年4月5日 14時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
緑の白猫 - ドロッドロでおっもい(超褒め言葉)好み過ぎる作品をありがとうございました! 前作も読ませて頂きましたが、どちらも心情描写が堪らなく好きです。作者様のペースで新しい作品を作って頂ければ飛びつきます。本当にありがとうございました。 (2021年4月5日 13時) (レス) id: 41276e8159 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - ノアさん» 最後まで読んで下さりありがとうございました!いつもは今までの作品も読んで下さっていたのかな?今作も読んで頂き嬉しい限りです!世界観を味わってもらうよう文は意識しているのでハラハラしたという感想を頂けて大満足です!今後とも応援よろしくお願いします! (2021年3月21日 21時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - muuさん» muu様!またのコメントありがとうございます!そして最後まで読んで下さりありがとうございました!憧れである貴方様に素敵な褒め言葉を頂けて感涙してしまいそうです(泣)いつも影ながら応援しています!そしてこの作品を応援して下さり本当にありがとうございました! (2021年3月21日 21時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - 虹野原さん» そして貴方様のような素敵な方に読んでもらえて心の底からこの作品を作ってよかったと思います!今後においてまた作品を作る機会では貴方様の応援を糧に全力で頑張ります!本当にありがとうございました! (2021年3月21日 21時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Omiso | 作成日時:2021年2月6日 18時