37話 ページ37
「最初はとても綺麗な顔に見惚れました」
その言葉にやっぱり顔じゃねぇーかと思った。だが、
「でも、先輩が沢山の任務を一人でこなすことも、最強と言われながらも努力していることも、偶に小さな気遣いも…言い切れないほどに五条先輩の顔でもない、最強という肩書でもない。五条先輩本人のことが好きでした」
そう言い切った彼女は一呼吸おいたあとパッと顔を上げては下手くそな笑顔を浮かべて
「その想いを告げることも、聞いてくれることもなくフられちゃいましたけど!」
アハハッと空笑いをする。そんな彼女を何も言わずに真剣に見つめる傑にグッと顔を歪ませる。そして、彼女は自身の手を掴む傑の手を見つめて
「こんな正直に言ってごめんなさい。でも私はこの通り五条先輩に未練がないとは言えないんです。それでも…夏油先輩は私と付き合えますか?」
そんな彼女に傑は一瞬たりとも迷うことなく微笑んで
「あぁ、もちろんだよ。正直に言ってくれてありがとう。君の気持ちを全て知った上であらためて伝えるよ。Aちゃん、君が好きだ。そして絶対に君の中に残る悟への想い。全部私に向かせてあげる」
優しい手つきで、彼女を引き寄せて抱き締めていた。
これでよかったじゃねぇーか。親友の恋が叶って。そう、本来は思うべきかもしれないが
Aの俺への想いを全て知ってしまった今、気持ちが昂って、ドクンと彼女にときめいて、彼女だけしか見えなくなって…
本当に今更、今更だけどさ___________
Aが好き。好きだって気付いて、想っちゃって。
それから溢れかえる想いの中に傑と彼女、二人が付き合うという事実に吐き気がして、心を掻き毟りたくなるほど馬鹿みたいに嫉妬して、
だけど、今更だからこそ目の前の教室に割り込んでいく度胸もなくて。
相手の中身を知らずに、相手のことを見ない女どもが嫌い。そうやって彼女も同じ風に勝手に決めつけて
今更こんな形で全てが間違っていた、違ったんだって分かって、理解して。
その上でAが好きになってしまう俺って本当に、本当に…ッ!!!
救いようのない奴だよな。
「ハッ…ハハ…ッ…A…ごめん…俺…ッ…」
俺もお前が好きだってあの時そう応えればよかった。
遅すぎた想いと悔恨は自嘲の笑みと共にこぼれ落ちて
教室で共に抱きしめ合う彼らを静かに見つめてはもう叶わない恋だと、前の自分を責め続けては
その光景と現実と後悔に目から涙が止まらなかった。
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Omiso(プロフ) - 緑の白猫さん» 前作でも今作でもコメントありがとうございます!ドロッドロという素敵な褒め言葉、最高に嬉しいです!心情は特に意識しているのでそう言って頂けて光栄に思います!次回作を出せれた時はぜひ応援よろしくお願いします!最後まで読んで下さりありがとうございました! (2021年4月5日 14時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
緑の白猫 - ドロッドロでおっもい(超褒め言葉)好み過ぎる作品をありがとうございました! 前作も読ませて頂きましたが、どちらも心情描写が堪らなく好きです。作者様のペースで新しい作品を作って頂ければ飛びつきます。本当にありがとうございました。 (2021年4月5日 13時) (レス) id: 41276e8159 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - ノアさん» 最後まで読んで下さりありがとうございました!いつもは今までの作品も読んで下さっていたのかな?今作も読んで頂き嬉しい限りです!世界観を味わってもらうよう文は意識しているのでハラハラしたという感想を頂けて大満足です!今後とも応援よろしくお願いします! (2021年3月21日 21時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - muuさん» muu様!またのコメントありがとうございます!そして最後まで読んで下さりありがとうございました!憧れである貴方様に素敵な褒め言葉を頂けて感涙してしまいそうです(泣)いつも影ながら応援しています!そしてこの作品を応援して下さり本当にありがとうございました! (2021年3月21日 21時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - 虹野原さん» そして貴方様のような素敵な方に読んでもらえて心の底からこの作品を作ってよかったと思います!今後においてまた作品を作る機会では貴方様の応援を糧に全力で頑張ります!本当にありがとうございました! (2021年3月21日 21時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Omiso | 作成日時:2021年2月6日 18時