35話 ページ35
傑の本音を聞いて、応援していると言ってしまった以来、そのことに対する後悔だけが募っていく。
だが、それから何かをすることもなく俺はただ傑と彼女の関係が着々と深まっていくのを傍観していた。
そして、傑は放課後だけでなく空いた時間があれば彼女の元へと行くようになった。
「どんなけアイツのこと好きなんだよ」
愚痴るように本音を溢すと硝子が教室から出て行った傑の背中を見ながら
「なんか少し前のアンタ見てるみたい」
とポツリと呟いた。
「は?俺みたいってなんだよ」
「自覚なかったの?前まであれくらいAちゃんのところに通ってたじゃん。てっきり好意でもあると思ってたけど傑のこと応援してるあたり私の勘違いだったか」
「…ハハッ!俺がアイツのこと好き?いや、ないだろ。アハ…ハッ…ウケる」
そう、ウケるよ。自分の動揺ぶりに。
なんでこんなバクバク心臓が煩い?まるで硝子の言葉が図星であるかのように。
可笑しいだろ。俺が彼女から告白された時、好意を向けられて冷めただろ。心底どうでもよくなっただろ。
所詮、アイツも他の女と一緒だって分かっただろ。
「ふーん。でも残念だな。やっとアンタにまともな彼女が出来ると思ったのに」
「まともな彼女?ないない。アイツだって今までの女と変わりねぇーだろ」
「アンタ…それ本気で言ってる?」
呆れるような声に意味が分からないと首を傾げると硝子はジロリとこちらを見ては
「私から見てもAちゃんはさ、"ちゃんとアンタのこと見てたよ"」
ちゃんと見ていた という言葉を指す意味は説明されなくても分かった。
そしてやっと今、パッと頭に浮かんだ疑問が一つ。
なんでアイツが俺を好きになったのか聞いたっけ?
顔、強さ、権力。他の女と一緒の理由だって決めつけて何も聞かなかったんじゃないか?
それがもし他の女と違う理由だったら俺は_____
「(本当の私を見てください)」
見ていなかった。彼女自身を。
Aは硝子がいうようにちゃんと"五条悟"という俺を見てくれていたんじゃねぇーか?
「(私の気持ちと向き合ってください)」
向き合っていなかった。彼女の想いと。
Aは顔や強さ、権力じゃない。俺自身を好きだと伝えたかったんじゃねぇーか?
…あぁ、もしも全てその通りだったら俺はッ…!!!
ガタリと席を立ち上がってはその場から駆け出す。
硝子の呼び止める声が聞こえたが足は止まることなく彼女がいる教室へと向かった。
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Omiso(プロフ) - 緑の白猫さん» 前作でも今作でもコメントありがとうございます!ドロッドロという素敵な褒め言葉、最高に嬉しいです!心情は特に意識しているのでそう言って頂けて光栄に思います!次回作を出せれた時はぜひ応援よろしくお願いします!最後まで読んで下さりありがとうございました! (2021年4月5日 14時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
緑の白猫 - ドロッドロでおっもい(超褒め言葉)好み過ぎる作品をありがとうございました! 前作も読ませて頂きましたが、どちらも心情描写が堪らなく好きです。作者様のペースで新しい作品を作って頂ければ飛びつきます。本当にありがとうございました。 (2021年4月5日 13時) (レス) id: 41276e8159 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - ノアさん» 最後まで読んで下さりありがとうございました!いつもは今までの作品も読んで下さっていたのかな?今作も読んで頂き嬉しい限りです!世界観を味わってもらうよう文は意識しているのでハラハラしたという感想を頂けて大満足です!今後とも応援よろしくお願いします! (2021年3月21日 21時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - muuさん» muu様!またのコメントありがとうございます!そして最後まで読んで下さりありがとうございました!憧れである貴方様に素敵な褒め言葉を頂けて感涙してしまいそうです(泣)いつも影ながら応援しています!そしてこの作品を応援して下さり本当にありがとうございました! (2021年3月21日 21時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - 虹野原さん» そして貴方様のような素敵な方に読んでもらえて心の底からこの作品を作ってよかったと思います!今後においてまた作品を作る機会では貴方様の応援を糧に全力で頑張ります!本当にありがとうございました! (2021年3月21日 21時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Omiso | 作成日時:2021年2月6日 18時