32話 ページ32
夏油サイド
「頃合いかな」
一人残された彼女が立ち上がってその場を去って数十分が経過。
きっと屋上に向かったな。あそこなら基本誰も寄り付かないから一人で泣くにはそこしかないだろう。
今頃泣き疲れているだろうか。とっても可哀想だ。
「すぐに私が慰めてあげるからね」
教室を出て、廊下を歩き、屋上へ続く階段を登っていく。
少し錆びた扉のドアノブを回してギィーっと開けば、眩しい光が差し込み青空が広がる真下に彼女はいた。
膝を抱えては座り込み、肩を震わせている。
そんな彼女の元へ一歩一歩近づいていく。すると、足音で気づいたのか俯いていた顔をこちらにあげた。
「!…ッ」
普段では考えられない涙でぐちゃぐちゃな顔にゾクッと肌に走る刺激に舌舐めずりをしてしまう。
澄ましたいつもの君も素敵だけどこちらの顔も悪くないな。
こんな風にさせた悟が羨ましいよ。散々虐めたんだろうね。まぁ、私は彼女にこんな顔はさせないし、虐めもしないけど。今はね…
「Aちゃん」
しゃがみ込んで彼女と目線を合わせる。
「なんで…ッ…夏油先輩がここに…」
弱っているところを付け入るためだよ なんて素直に言ったら嫌われちゃうか。
「告白しているところ見てしまって…Aちゃんを放っておけなくて探したんだ」
「…ありがとうございます。でも今は一人にしてくださいッ」
そう言われて当然か。告白してフられた挙句泣いているところなんて見られたくないのだろう。
でも、私はこの時を待っていたんだよ?それに人間、こういう時こそ誰かに縋りたくなる。
だから、私が君を救ってあげる。デロッデロに甘やかしてあげるよ。
「やだ。一人になんてさせない」
強引に引き寄せてはギュッと抱き締める。ビクッと肩を揺らす彼女の耳元で囁く。
「Aちゃん。私の前で強がらないで?辛かったね、苦しかったね。もっと泣いていいんだよ」
「〜ッ…う゛ぁ…夏油…先輩…ッ」
グズグズ泣き出して私の背中に手を回す彼女。ほら、弱っている人間ほど脆いことはない。
肩が彼女の涙で濡れていく感覚が心地よい。
もっと泣いて、より私に縋って、強く抱き締めて。
その涙と共に悟の想いなんて流してしまえばいい。
空っぽな心に私という存在を植え付けてあげるから。
「よしよし。大丈夫、ずっと私が側にいてあげよう」
今日の日を持って君は悟を想う日々は終わりを告げ、
これからは誰より君を想う私との日々に塗り替えよう
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Omiso(プロフ) - 緑の白猫さん» 前作でも今作でもコメントありがとうございます!ドロッドロという素敵な褒め言葉、最高に嬉しいです!心情は特に意識しているのでそう言って頂けて光栄に思います!次回作を出せれた時はぜひ応援よろしくお願いします!最後まで読んで下さりありがとうございました! (2021年4月5日 14時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
緑の白猫 - ドロッドロでおっもい(超褒め言葉)好み過ぎる作品をありがとうございました! 前作も読ませて頂きましたが、どちらも心情描写が堪らなく好きです。作者様のペースで新しい作品を作って頂ければ飛びつきます。本当にありがとうございました。 (2021年4月5日 13時) (レス) id: 41276e8159 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - ノアさん» 最後まで読んで下さりありがとうございました!いつもは今までの作品も読んで下さっていたのかな?今作も読んで頂き嬉しい限りです!世界観を味わってもらうよう文は意識しているのでハラハラしたという感想を頂けて大満足です!今後とも応援よろしくお願いします! (2021年3月21日 21時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - muuさん» muu様!またのコメントありがとうございます!そして最後まで読んで下さりありがとうございました!憧れである貴方様に素敵な褒め言葉を頂けて感涙してしまいそうです(泣)いつも影ながら応援しています!そしてこの作品を応援して下さり本当にありがとうございました! (2021年3月21日 21時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - 虹野原さん» そして貴方様のような素敵な方に読んでもらえて心の底からこの作品を作ってよかったと思います!今後においてまた作品を作る機会では貴方様の応援を糧に全力で頑張ります!本当にありがとうございました! (2021年3月21日 21時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Omiso | 作成日時:2021年2月6日 18時