22話 ページ22
「泣いていたのかい?」
その言葉に目を見開くと目元を親指でなぞられ
「目も真っ赤だし、流したあとも残ってる」
バッと顔を隠すものの「もう遅いよ」という先輩に観念して誤魔化すよう苦笑いを溢す。
「恥ずかしい話なんですけど怖い夢を見て」
「どんな夢を見たんだい?」
そこまで聞かれると思ってなかった。五条先輩に振られる夢なんて言いにくいし…ここはありきたりに
「強い呪霊に襲われる夢です」
「!…そう、それは怖かったね」
目を細めて優しく頭を撫でてくれる先輩。だけど、表情はどこか固く怒っているようで
「何か怒ってます?」
「いや?怒ってないよ。ただ本当のこと言ってくれないのかなーって」
「!」
何故か嘘がバレてこちらをジーッと見透かすような視線に気後れする。思わず逃げるように「お茶入れてきます」と伝えて夏油先輩から離れた。
お茶を汲んで帰ってきた時には座ってくつろいでいる先輩はニコニコしたいつもの様子に戻っていてホッとする。
でも、その笑顔が怖いだなんて思ってしまうのは先輩の意図がよく読めないからだろう。
机の上に二人分のお茶を置いては先輩と少し離れたところに座る。
先輩がわざわざここにきた理由はきっとお見舞いだけじゃない。しばらく沈黙が続く中、夏油先輩が話を切り出した。
「Aちゃんはまだ悟のこと諦めていない?」
「…はい」
すると、離れていた距離を詰めるようにスッと私の隣に移動し、無造作に置いていた手をギュッと両手でとられて見つめられる。
「なら私は君のために協力したいんだ。だめかな?」
その言葉に息が詰まる。正直、先輩のアドバイスで上手くいった覚えがない。
それなら自分なりに五条先輩と向き合った方がいいんじゃないかって。それにこれ以上は迷惑になる。
「夏油先輩、これ以上は迷惑になると…「迷惑になんてならない!!!」
部屋に響くほどの大声に肩を揺らす。そんな私に構わず先輩は必死に私の手を握りしめては
「ッAちゃん!私に信用がないのは分かってる。でもお願いだよ。ただ君の力になりたいんだ。我儘だって分かってる。もしかして私は必要ないのかもしれない。それでも大切な親友と後輩の支えになりたいんだ」
少し痛いぐらい力強く握る手と思いがこもった言葉に拒むことなんて出来なくて
「わ、分かりました…じゃあまたアドバイスお願いできますか?」
何より、私を見つめる鋭い眼差しに威圧されて断れなかった。
237人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Omiso(プロフ) - 緑の白猫さん» 前作でも今作でもコメントありがとうございます!ドロッドロという素敵な褒め言葉、最高に嬉しいです!心情は特に意識しているのでそう言って頂けて光栄に思います!次回作を出せれた時はぜひ応援よろしくお願いします!最後まで読んで下さりありがとうございました! (2021年4月5日 14時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
緑の白猫 - ドロッドロでおっもい(超褒め言葉)好み過ぎる作品をありがとうございました! 前作も読ませて頂きましたが、どちらも心情描写が堪らなく好きです。作者様のペースで新しい作品を作って頂ければ飛びつきます。本当にありがとうございました。 (2021年4月5日 13時) (レス) id: 41276e8159 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - ノアさん» 最後まで読んで下さりありがとうございました!いつもは今までの作品も読んで下さっていたのかな?今作も読んで頂き嬉しい限りです!世界観を味わってもらうよう文は意識しているのでハラハラしたという感想を頂けて大満足です!今後とも応援よろしくお願いします! (2021年3月21日 21時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - muuさん» muu様!またのコメントありがとうございます!そして最後まで読んで下さりありがとうございました!憧れである貴方様に素敵な褒め言葉を頂けて感涙してしまいそうです(泣)いつも影ながら応援しています!そしてこの作品を応援して下さり本当にありがとうございました! (2021年3月21日 21時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - 虹野原さん» そして貴方様のような素敵な方に読んでもらえて心の底からこの作品を作ってよかったと思います!今後においてまた作品を作る機会では貴方様の応援を糧に全力で頑張ります!本当にありがとうございました! (2021年3月21日 21時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Omiso | 作成日時:2021年2月6日 18時